ツンデレ、クーデレ、猫デレ、ボコデレ。気が付くと世の中においては○○デレという言葉が溢れており、寧ろ一般的な言葉として浸透してきている感もある。そうは画面の前の読者の皆様も思われないだろうか。オタクではない普通の人にツンデレと言っても、意味が通じるものとなってきている。ではそんな○○デレの中の一つ、ヤンデレというデレ方については画面の前の読者の皆様はどこまでご存じであろうか。
空鍋なんて言葉が、ヤンデレ関係の用語で存在するがそこはまぁ各自検索していただくとして。ヤンデレ、それは愛を煮詰めすぎてとんでもなく重くなってしまった者と言えるかもしれない。
さて前振りはここまでにして何が言いたいかと言うと。早い話、この作品のヒロインである凛香(表紙)もまた、ヤンデレと言っていい程に愛が重いからである。
世界で大人気のオンラインゲーム、【黒い平原】。そのゲームに熱中し、既にやりこみ勢であるという事以外はごく普通の一般人の少年、和斗。彼には嫁がいた。
先に説明しておくが、今流行りの一つである幼馴染兼許嫁系の存在ではない。彼の嫁、それは【黒い平原】内における存在である。
HN「リン」。ネトゲの中の嫁である彼女と、気の置けぬ気安いやり取りを繰り広げながらも今日もネトゲに耽る和斗。
が、しかし。ある日何気なく推しアイドルの話をしたところ、リンはその正体を唐突に明かしてくる。何を隠そう、凛香はアイドルグループ「スター☆まいんず」の一員であり和斗の推しアイドルだったのである。
いきなりの正体露呈からの翌日。男嫌いと噂されるその姿の幻想をぶち壊すかのように、いきなり世界を越えて話しかけてくる凛香。
「―――これからは、リアルでも一緒にいられるわね」
それどころか、妙に距離感も近く、ぐいぐいと踏み込んできて。更には彼に真っ直ぐ重すぎる愛情を向けてきて。何故か彼女は、ネトゲ内の嫁と言う関係性を現実世界に置いても適用し、彼の隣にぐいぐいと潜り込んできたのである。
何故そんな事をするのか。それは彼女は和斗にゲーム内でこれでもかと惚れ込んでいたから。永い下積み時代、邪な思いを抱いた者達が近づいてきたりと誰を信じてよいかも分からぬ中。それでも彼だけはずっと変わらず接してくれた。だからこそ自分は支えられていたのだ、と。
まるで自分に縛り付けるかのように些細な事でやきもちを焼かれたり。妻らしくお弁当を作ってきてくれたりと尽くしてくれたり。あっという間に凛香の家族とも仲良くなり、彼女の重すぎる愛に振り回される和斗。
「それ、好きな人に対する行動だよ」
彼の中にあった名もなき感情。そこに名前を与えられ、その感情を解き明かされ。彼は自分の中にあった彼女への思いを自覚していく。何故アイドルとしての凛香を好きになったのか。何故、彼女に愛されても拒まなかったのか。
「だって俺は・・・・・・水樹凛香という存在そのものに、心底惚れているのだから」
「俺は、凛香が好きです」
それは、ネトゲという全ての心のヴェールを取っ払った場所だからこそ生まれた感情。誰よりも彼女の事が好き、そんな真っ直ぐで純粋な愛。
正しく悶絶する程に愛が重く、けれどきちんと芯が通っているからこそその愛は確かに甘い。故にラブコメとして、一つ完成形なのである、この作品は。
愛が重いヒロインが好きな読者様、ラブコメで悶絶してみたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
ネトゲの嫁が人気アイドルだった 1 ~クール系の彼女は現実でも嫁のつもりでいる~ (オーバーラップ文庫) | あボーン, 館田ダン |本 | 通販 | Amazon