
さて、時にアレである。生徒会を舞台にしたラブコメというのは、今も尚存在しているが、その作品で描写される生徒会というのは大分脚色が入っている、というのは前に何処かで語ったであろう筈だ。例えば生徒会の一存、みたいに生徒会にはとんでもない権力がある、という訳ではない。生徒会というのは基本的に教師の使い走り、折衝役、中間管理職が精々、と言えるのかもしれない。
ではどんな利点が生徒会にはあるのか、それは多分、内申点とか高校生にとっては重要であろう観点で在ろう。そんな、生徒会を舞台にしたのがこの作品なのである。
「これに懲りたら、少しは素行を見直すんだな」
とある高校、生徒会長に就任したばかりの高校二年生の少年、正近。彼はある日、生活指導の体育教師、白旗に美人と噂の後輩ギャル、萌仲(表紙)が喫煙の疑惑をかけられている場面に遭遇し。教師が絶大な権力を握る、という構造が気に入らなかったのも相まって、助け舟を出し。萌仲を解放させる事に成功する。
「お礼になんでもしてあげるよ、センパイ」
そこで関りは終わるかと思っていたら、何故か萌仲が生徒会室を訪ねて来て。後輩にもかかわらずグイグイ来る彼女がお礼をしたいと言い、じゃあと事務仕事に巻き込んで。気が付けば何故か、彼女に懐かれて。ぐいぐいとくる彼女が、生徒会室に居ついていく。
「昔からこんなことばっかりだからさ、私」
生徒会顧問である鵠沼先生に押し付けられた仕事を共にこなしたり、生徒会室で二人でおひるごはんを食べたり。その途上で判明するのは、喫煙疑惑の真実。それは悪意による冤罪、白旗先生の自作自演。 怒りに駆られる正近を、何処か諦めたように萌仲は止めるも、涙は止められず。
その先に、実は生徒会会計である茉莉とも同じクラスであると判明、彼女にも萌仲の抱えていた事情が知られ、色眼鏡を解いた茉莉とも友達になる中。正近と二人で出かけた先で萌仲が買ったネックレスが白旗先生に目を付けられ、再び危機になり。今度は正面から助けた事で正近までも目を付けられ。少しずつ嫌がらせという名の追い込みが始まる。
「どこまでやるか、ですね」
それはもう許しては置けぬ。 何処までやる、決まっている、今までのお礼参り代わりに何処までも。鵠沼先生が作った借りを返してもらうという名目で巻き込んで、仲間達にも協力してもらい。白旗先生の醜聞を幾つもまとめ上げ新聞という形で告発し、退職に追い込むことに成功する。
それは彼の心が痛む結果、徹底的にやったからこその傷を抱える結果、とはなる。だけどそれでも、萌仲との距離をまた取り戻す事には成功して。
「センパイと付き合えますように」
そして、萌仲の心の中、恋は本格的に芽吹いて。本格的に始まっていくのである。
生徒会を舞台に繰り広げられるこの作品、ぐいぐい来るヒロインが好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
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