読書感想:時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん4.5 Summer Stories

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん4 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で政近の前に現れた「彼女」、その彼女が特大の波紋を人間関係に投げかける所で前巻は終わった訳であるが、今巻はそんな波紋を一旦置いておいて、初の短編集である。あの波紋を置いておいて、今巻では何を書いていくのか。それは夏、描き切れなかったものを書いていく巻であり、生徒会に関わるあれこれが絡まないからこそ、彼等の等身大、いつもの姿が見えてくる巻なのである。

 

 

普段は相争っている彼等だって、本当は等身大。その争いを一旦置いてしまえば、そこにあるのは当たり前の関係なのである。

 

「初期の厨二病ですね。早めの治療をお勧めしますよ」

 

沙也加と有希が何も飾らぬオタク同士として、正面からの殴り合いのような激論を交わしたり。

 

「わたし、待つことにするね?」

 

乃々亜が政近とアーリャに借りを返す為に、配下を使って手を下したり。

 

「これからよろしくね? 君嶋さん」

 

綾乃とアーリャがひょんな事から激辛の料理に挑むことになり、互いに不様な所を見せてしまって、友情が芽生えたり。

 

 生徒会の業務として学園七不思議の調査に挑んでみたり、有希が政近にふとした興味から催眠術を仕掛けてみれば政近のキャラがとんでもない事になったり。等身大の日々、彼等だからこその賑やかさのある日々の中で。意外なところが繋がっていったり、いつもの面々の過去が少しだけ描かれ絆が深まったり。そんな中、政近とアーリャの絆は確かに深まっていく。近づいているようで遠ざかっている、けれど実は少しずつ近づいている。だが、だからこそ。政近の心の中、自覚している事は少しずつ形を持っていく。

 

(・・・・・・ちゃんと、終わらせないとな)

 

それは彼の心は未だ「彼女」に囚われていると言う事。何だかんだとずっと引きずってしまっている、忘れたくないと心の中で思っているという事。だからこそ、彼女の思いに向き合う為には。自分を好いてくれたその思いに応える為には。「彼女」との初恋をきちんと終わらせなくてはならぬ。「彼女」から恋心を返してもらわねばならぬ。

 

だからこそ、前巻の最後、遂に訪れた再会の時。ここから全てが、本当の意味で始まるのである。政近がアーリャとのラブコメを始める為の、恋心の決着の為の戦いは。

 

等身大の輝きが見える中、日常のドタバタで笑わせてくれる今巻。さて次巻ではどんな波乱が待っているのか。

 

それが見れる時が楽しみである。

 

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