読書感想:かくて謀反の冬は去り2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:かくて謀反の冬は去り - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

さて、前巻の感想でちらりと触れていた、「本能寺の変」とは何であったか、と思い返して「どうする家康」の話だと思いだしてこの巻の感想を書いている訳であるが。一先ず現在放送中の大河ドラマは見てないので、触れるのはなしとして。革命、謀反の先にあくまで摂政という形で奇智彦は政治をその手中に収めた訳であるが。政治的に言えばここからが本番、というのは画面の前の読者の皆様もご存じであろう。

 

 

掴んだ、それでは終われない。掴んだ先にきちんと統治する事、それが大事な事。しかし奇智彦の人徳、というのは果たしてどのくらいあるのだろうか? その辺りに触れていき、かなり波乱万丈な船出となるのが今巻なのである。

 

「精兵、二〇〇近く」

 

摂政について早々の大窮地。幸月姫にご挨拶を、と称して王都に進軍してきたのは東国、太刀守の軍勢約三千。幸月姫の祖父が率いるその軍勢を前に、奇智彦側は近衛兵約二百のみ。それが後ろ盾の氏族を持たぬ彼の限界であり、今の彼の評価。あつまった二百の軍勢も、熊相撲なる謎の団体を立ち上げた荒良女と、止めきれなかった鐘宮を始めまぁ使い物になるのか疑問符のつく奴等ばかりのみ。 頭痛を堪えつつ、一先ず面会する事にし、提示されたのは元王妃と第二王女を東国で引き取り、娘の愛蚕姫(表紙)を奇智彦の嫁に、そして幸月姫も女王として認めるという破格のもの。しかし飛びついてはいけぬ、それは飛びついては取り込まれる合図。

 

「俺に忠実な軍勢が要る」

 

「殿下、借財にもコツというものがあるのですよ」

 

では何がいるのか、それは忠実な軍勢。どの軍勢の威光にも左右されぬ、自分だけの軍勢。しかしそれを作るには、何もかも足りぬ。特に金子も足らぬ。そんな彼へと愛蚕姫は囁く、借財にもコツがあるのだと。その彼女も利用し、半ば騙すような形で金を集め軍隊を作り始める奇智彦。彼の前、次に襲い来るのは謀反の噂。近衛兵にも内通者あり、その裏で糸を引くのは軍主流派。非主流派の希望になりつつあった奇智彦を疎む者達の毒牙が目覚めんとする中、もはや自分の知らぬ所で起きていたその動きがもう止められぬ、というもうどうしようもない真実を知り。もはや止められぬ戦いの中に飛び込んで、クーデターを逆に手玉に取ろうと七転八倒

 

「分かったかもしれない」

 

その中、奇智彦は不意に、太刀守が求めていたものに気付く。それは、彼だけが持っていたもの。摂政として立つのに必要なもの。それを自分から振りかざした時、彼はいよいよ代王として立つのである。

 

更に世界が混沌、より深みを増していく今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。