読書感想:ほんわか魔女を目指していたら、史上最強の杖に選ばれました。なんで!?

 

 さて、時に大きな力というものを持たせてはいけぬタイプの人間はどんな者なのだろうか。誰かに操られやすい愚か者か、はたまた悪意を持つ者か。その答えはまぁ各自の中にあるであろうが。大きな力を持つものには同時に、大きな責任を持つ、というのは画面の前の読者の皆様もご存じであるかもしれない。

 

 

ではこの作品の主人公、レヴィ―(表紙中央)はどうなのか。彼女自身は、特に責任感なんて気にしない無自覚、能天気なタイプ。まるで台風の様に周囲をかき乱し。その中で我が道をどこまでも突き進んでいくタイプなのである。

 

隣接する魔人たちの国家、リントブルム帝国との戦争が長く続くアレスガリア王国。黎明期に登場した暴虐の魔王、イヴリスがメアリーという魔女に討伐され、しかしメアリーは魔王が再び姿を現す、という言葉を残し姿を消し。 新たな「メアリー」を育成するために設立されたアレスガリア国立魔女学園。入学式にて代表となったメアリーの血を引く少女、シトリー(表紙右)。血に刻まれた呪いにより呪詛の一族と呼ばれる彼女は、一縷の望みをかけ国宝である聖杖を引き抜こうとするも、認められず。

 

「引っ掻き棒! ゲットだわ!」

 

そこに遅れて天井をぶち破る形で乱入してきたレヴィ―。彼女の手に呆気なく聖杖は抜かれ、彼女の手に収まり。周囲が驚きに包まれる中、レヴィ―はトモダチを作るために元気に行動を始める。

 

「別にいいわよ、それでも!」

 

その友達候補として目を付けられたシトリー。正に台風が如きエネルギッシュな彼女に振り回され。高飛車な令嬢、ミランダ(表紙左)に決闘を挑まれたかと思えば、彼女の魔法を全てお菓子に変えてしまうという魔法で呆気にとられ。そんな中でも、呪詛の一族である自分を真っ直ぐに見てくれて。気にせず傍に居てくれる彼女に、少しずつ心を揺らされていく。

 

だけどその中で明かされていくのは、レヴィ―の謎。彼女の事を知っているようで自分は何も知っていない。そんな事実にすれ違ってしまう中。乱入してきた魔族により、レヴィ―の正体、そしてシトリーに隠された秘密は明らかになり。シトリーとレヴィ―は、復活した魔王に立ち向かう事となる。

 

「この想いは、わたしだけのものではありません」

 

「拒絶もするし、なんだったら否定もさせていただきます」

 

 

胸にあるのは、レヴィ―の事を心配していた母親の思い。その思いを継いで、彼女の隣に「友人」として並び立ち。手を差し伸べてきた魔王を否定する。魔王の誘いよりも魅力的な輝きが隣にあるからと、手を払い退ける。

 

「「―――最高で最強の友達が、いるんだから」」

 

 

例え復活した魔王が立ち塞がるとしても怖くない。最幸で最強の友達が隣にいるから。今ここから始まるのである、双璧の伝説が。

 

不器用にでも友達として手を繋いでいく、不器用な友情が厳しい世界で光るファンタジーであるこの作品。 少女と少女のお話が好きな方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: ほんわか魔女を目指していたら、史上最強の杖に選ばれました。なんで!? (ファンタジア文庫) : 下等 妙人, 我美蘭: 本