読書感想:赤点魔女に異世界最強の個別指導を!

 

 さて、この世界には塾、または予備校と言った志望校合格、もしくは学力向上を目的とした機関が存在している訳であるが、画面の前の読者の皆様はそういった機関を利用された事はあるであろうか。個別、大勢、その形式は様々にあるけれど。そういった機関もピンキリ、そこには当たりはずれもある、というのが通説であるのかもしれない。

 

 

当たり外れ、はそれぞれのやり方、感性に合うかの問題であるので、そこは是非に各人に合うものを選びたい次第である。というのはともかく。この作品は受験を舞台にした作品であり。珍しく、受験生ではなく浪人生を主役にしたお話なのである。

 

剣と魔法のファンシーな世界から、すでに片側を丸ごともぎ取ったとある異世界。魔法が一度絶滅し、この世の誰にも魔法が使えなくなり、異世界の地球から禁断の知識を引きずり出して、「フォーミュラブルーム」と呼ばれる最新鋭の魔女の箒により、真帆の力を行使して借りるこの異世界で。魔女の花形、そう呼ばれる召喚禁域魔法学校、マレフィキウム。しかしその扉はあまりに固く、浪人生を集めただけで経済が回る街が出来るほど。

 

「簡単な道なんかねえ。甘い言葉に振り回されんな」

 

そんな街で、予備校に通う浪人生、ヴィオシア(表紙)。伝説の魔女を祖母に持つ彼女は、しかしおちこぼれであった。それこそ言ってしまえばバカ、別の作品で言うのならバカテスレベルで。相棒である曰く付きの箒、メフィストフェレスにすら認められず。そんな彼女の個人教師として、異世界からの来訪者、矢頃は彼女を合格に導くために指導をしていく。

 

だがしかし、浪人生にとっての受験、というのはどういうものか。それをご理解されている読者様もおられるのではないだろうか。浪人生にとっての受験、それは現役よりもより蹴落とし合い、足の引っ張り合いとなるのだ。 そして箒もまた、宿主を食らわんと魔の手を伸ばす。ヴィオシアの友人であるドロテアも魔王に落ち、更には予備校エースのメレーエまでも狙われ、悪質な予備校の生徒達に絡まれていく。

 

「みんなのことは私がたすけるなの!」

 

見逃すべき、見放すべき? そんな事は望んでいない、知った事ではない。そう言わんばかりにヴィオシアは駆け抜ける。例え未熟であっても最前線を。全員を助ける為に。

 

「これは魔法だぜ。勉強するだけで答えは出るはずだぞ‼!!!!」

 

その道を切り開き、彼女の事を守り抜く為。矢頃は命の危機のある中を駆ける。己の中で組み直した魔法を武器に、知識を機転の種にして。

 

ちょっと捻った設定かと思いきや、世界観がとても詰め込まれた独特な面白さのあるこの作品。 鎌池和馬先生の作品が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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