読書感想:魔王と魔女の英雄神話

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。皆様はもしも何か一つだけ願いが叶うとしたら、何を望まれるであろうか。莫大な富か、はたまた圧倒的な力か。その答えは様々であろう。私はもし叶えてくれるのならば、向こう十年分くらいの幸運が欲しい。出来れば宝くじの高額当選をするくらいには。

 

 

という、若干下種な方向のお話はさておき。この作品においては、このもし一つだけ願いが叶うなら、という問いかけが重要となる事を覚えておいていただきたい。

 

歴史が神話の時代から地続きで、七つの位階で構成された魔法や「霊宝」と呼ばれる神話の時代の武器防具、先天性の異能である「ギフト」や魔導書といったものが存在し、七つの種族に分かれた人類が存在するオルビス大陸。かの地に前世、日本の記憶を持って転生した少年、レオンハルト(表紙右)。三千年ぶりの「魔王」として生を受けた彼は前世に残した只一つの未練の為に、帰る方法を探し禁忌の魔導書を探していた。

 

彼は旅の途中、遺跡の探索帰りだった少女、シャル(表紙左)と出会い、大都市についた所で魔物の大発生に遭遇し。共に事態を解決した事で冒険者になって欲しいと依頼され、シャルと共に冒険者になる事となる。

 

その場へレオンハルトを追い、彼を主と慕う二人の少女、シルヴィアとミアも現れ合流し。四人パーティとなり、依頼を受けてシャルの故郷へ向かう事となる。

 

故郷に戻りにくい事を仄めかす彼女を心配しつつも依頼を受け、遭遇したのは影に潜る強大な魔物。その戦いの中で明かされるのは、「魔女」である彼女の過去。そんなものは関係ないとはっきり言い、共に魔物を退け。故郷への蟠りを少しだけ取り除いた彼女と再び冒険へ向かう事となる。

 

だが、波乱はすぐに巻き起こる。突如町に現れたのは、生命を吸い取る謎の塔。シルヴィアとミアが衰弱し動けなくなり、二人で向かう先に現れたのはシャルの幼馴染であるヘレナ。テロリストへと身を墜としていた彼女は、全ての魔物の母親である「魔性母神」アモルヴィアの復活を目論み。因縁の対決に向かうシャルと別れ、レオンハルトを一人アモルヴィアとの戦いに挑む。

 

戦いの中で明かされる、魔物と言う存在の真実。それは彼女の母星の表れ、一つの救済の形。だけどそんなものは望まない。救済なんて、自分達には必要ない。

 

「神様が救わないなら、魔王がすべてを救ってやる!!」

 

人間としての救済をしないと言うのなら、自分が救って見せる。過去には戻れぬ、未来ではない、ならば刹那の現在だけは約束する。その救いの形を示し、戦いに終止符を打つのである。

 

王道のファンタジーと言った感じのお話であり、真っ直ぐな熱さが楽しめるこの作品。王道な面白さが欲しい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

魔王と魔女の英雄神話 (講談社ラノベ文庫) | 神ノ木 真紅, 蔓木 鋼音 |本 | 通販 | Amazon