さて、ラノベにおいて主人公にいるのは大体が妹であり、妹とは仲が良かったりいわゆるブラコン、シスコン状態であったりすることが多い気がするのは私だけだろうか。主人公の弟、という存在は中々に見たことがない気がする。主人公に兄がいる、という例は時々見る気がするが。という話はともかく。ラノベのように仲の良い兄妹、特に兄妹という部分に限定するのなら。現実世界に同様の例は中々転がってはいないのではないだろうか。
仲が悪くて冷戦状態であったり、そもそも没交渉であったり。様々な場合があり得るかもしれないが、ラノベのように仲が良い兄妹という存在も中々にいないのかもしれない。この作品における兄妹、主人公である皇季とその実妹である雪姫（表紙左）は、ラノベとしては珍しく仲がちょっと冷えている兄妹なのである。
会社経営者の父親を持つ父子家庭、過去のとある経験から年齢の割には大人びている皇季。そんな彼に、雪姫は家ではツンツンとした態度をとって、皇季はあまり気にせずそんな彼女を大切にする。そんな日々に変化の時はすぐにやってくる。
「これから宜しくな。なんでも頼ってくれよ」
父親が言いそびれていた再婚する、しかも向こうの連れ子として新たに義妹が出来るというお知らせ。雪姫は激怒するも、皇季は凡庸と受け止め。新たな住宅へ移る中、新たな義妹である未桜（表紙中央）と、美穂（表紙右）と出会い。皇季にとっては過去にちょっとした関りがあった者達との再会に、少し心が躍る。
「もうお兄ちゃん離れやめた！！！！！」
「どんな宣言なのそれはぁ！」
元々関わり合いがあったからか、すんなりと家族として馴染み始める皇季と未桜、美穂。そんな彼等を見て、心穏やかではない雪姫の心の臨界点はあっさりと超えられて。今まで我慢していた感情、兄の事が大好きという思いを解放し。彼女はかつての自分、ブラコンの自分に戻る。
未桜と美穂に威嚇の姿勢を取る雪姫を宥めつつ、皇季は気になる事を調べ始める。それは姉妹の母親であり、自分にとっては義母となった女性、実佳に関する来歴が見えてこないという事。義妹たちとお出かけして情報を探りつつ、頼りにしている大人達に探りを入れて貰ったりしつつ。義母の秘密に迫ろうとする。
なぜそこまでするのか。それは皇季たち兄妹の抱えた過去。母親の不貞により家庭が崩壊し、父親が抜け殻となった、という過去。 更にそこに絡んでくるのは、かつて部活の先輩後輩であった美穂との関係。
様々なものを見返し、大人に心配されたりしながら。それでも秘密に迫ろうとする中。子供達は子供達で、関係をすり合わせて。いつの間にか、ちょっとドタバタな家族、兄妹になっていく。
「大好き！」
そして裏は特になかった義母も、父親も纏めて。一つの家族になっていくのだ。
悲惨な過去があるから際立つホームドラマの温かさ、ラブコメ未満なラブの甘さがあるこの作品。ホームドラマを楽しみたい方は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
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