読書感想:美少女揃いの英霊に育てられた俺が人類の切り札になった件

 

 さて、教官というのは教師、指導役とも言いかえる事も出来るかもしれないが、画面の前の読者の皆様は自分に指導してくれる人の中に苦手としている人はいるであろうか。因みに私はいる。一々うるさいと、内心鬱陶しいと感じている人間がいたりする。しかし、指導されるうちが花である。きちんと指導は聞いておいた方が身のためであるのだ。

 

 

さてそんなちょっと闇な前置きはともかく、この作品の作者様を画面の前の読者の皆様はご存じであろうか。かつてアニメ化もされた、「空戦魔導士候補生の教官」シリーズの作者様である。まずは一つ、前作を楽しませていただいた身として再びお会いできる日をお待ちしておりました。 と言う事で久方ぶりのこの作品はどんな作品なのかと言うと。確かに前作の因子、血脈を感じる作品なのである。

 

魔獣や魔導士、魔法と言ったものが存在する王道な異世界。この世界は全員が多かれ少なかれ魔力を持っている筈であった。しかし主人公、ウィリアムは只一人魔力を持たず。貴族であったが生家からは追放され、平民たちからも侮られ。貴族の義務として入学した魔導学園では「最弱兵器」という烙印を押され、退学寸前であった。

 

『わたしたちならお前の魔力を覚醒させることができる』

 

退学を賭けた試験の手前で聞いたのは、学園の何処かに封印されている言う超越的な力を持つという指輪の噂。 一縷の望みをかけ、その指輪を探し出し。その指輪をつけた途端、彼は千年前の世界、今は伝説として謳われる三人の英霊と出会う。魔王であるイリス(表紙左)、大天使であるソフィア(表紙中央)、剣聖であるミオ(表紙右)。彼女達の手によりウィリアムの魔力は目覚め、幼馴染みのセシリーとの退学を賭けた対決にも、彼女達が憑依し代わりに戦う事で勝ち。何とかこの学園に残ることに成功する中。ウィリアムは口車に乗せられるかのように、彼女達の指導を受ける事となる。

 

 

『天才というやつなんでしょうね』

 

どこか拗ねたみたいに、捻くれている彼。強くなりたくないと嘯く彼。しかし指導を始めたイリスやソフィア、ミオたちはすぐに驚愕する事になる。彼の異常なまでの天才性に。一度教えただけですぐ吸収して自分達に食らいつこうとしてくる、師匠としての適性を逆に問うてくるような学習性に。

 

そんな異常性を持ちながらも、師匠たちの手により自分の強さの自覚は誤魔化されて見送られ。だが少しずつ、分かる人にはわかる強さが周知されていく。 王族にも注目され、魔獣討伐に駆り出され。戦いたくないと嘯きながら、しかし誰よりも強い力を持ちながら。 そんな彼の思いは、王である魔物が率いるスタンピードの中。セシリーに迫る危機の中、問われる事となる。

 

戦う理由、そんなものが何処にある。 自分を貶めてきた者達を守る必要が何処にある、そんなものの為に戦わねばならぬ理由は何処にある。

 

「助けられるなら助けたい。俺が戦う理由なんてその程度のことだ」

 

師匠たちのような大義名分なんてありはしない。だけど、それでも。自分だけの大義名分、くだらなくとも戦う理由はその胸にある。 だからこそ、彼は誇りを取り戻す分水嶺を越え。確かに自分の意思で戦場に立つ。逃げず、全てを守り抜くために。

 

 

王道真っ直ぐど真ん中、正に安定して骨太な面白さがあるこの作品。しかしこの作品はきっと、続けば続くだけ面白さが出てくるはず、深煎りされた分だけ面白くなるはずだ。だからこそ、この作品は続くべきだと声を大にして言いたい。

 

 

真っ直ぐに突き進む、教官ものが好きな読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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