読書感想:弱小国家の英雄王子1 ~最強の魔術師だけど、さっさと国出て自由に生きてぇぇ!~

 

 

 さて、画面の前の読者の皆様には逃れられぬもの、というのは存在しているであろうか。例えば社会人であれば会社においての責任、仕事、というものから逃げられぬかもしれぬ。逃げたいと思っていても、生きる以上逃げられぬ。そんなものを抱えている読者様もおられるかもしれない。

 

 

 

そんなものをこの作品の主人公、アレン(表紙左)も抱えている。彼が逃れられぬもの、それは「戦場」。文字通り命の危険がある、修羅場である。ではなぜ逃げられぬのか。

 

「王子の俺がどうして蟻んこなのかを疑問に思おうぜ、セリア?」

 

それは彼の立場のせいである。とある大陸にある弱小国家、ウルミーラ王国。軍事力特化の「帝国」、魔法特化の「魔法国家」、信仰特化の「神聖国」、技術力特化の「連邦」。四つの大国に囲まれ、常に領土を切り取られている、風前の灯火が常な国。しかし魔術師として「雷」の魔法を極めた彼が軍部の長についた途端、連戦連勝。だけど彼は隠居したい、自由に生きたい。しかし彼が隠居してはあっという間に国が亡ぶ。だからこそ彼は隠居も、そも休む事も出来ず。魔法国家の元令嬢、現メイドなセリア(表紙中央)を傍らに戦場から戦場へと、パーティだコラと言わんばかりに駆け回らせる。

 

 

ある時は、バカな事を言ってセリアに関節技をかけられたり。またある時は血の気の多い野蛮気味な部下達に悩まされたり。 更にある時は帝国の皇女、リゼ(表紙右上)を護衛して魔法国家に向かう事となったら、二つの国の連合軍に襲われる事となったり。

 

「男が必死になる理由なんて、誰かを守るために決まってるじゃねぇか」

 

いつだって向かうのは修羅場、いつだって戦況は不利。それでも戦うのは何故か? 国家の利益? 生き残る為? 否、彼もその部下達も利益、よりも優先すべきものがある、我ら情のために動くと。時に自分のお人よしさに悪態をついたりしながら、それでも困っている、助けてほしいという願いを聞いてしまったのならば、そこに命を賭ける理由は既に存在する。ただ、それだけでいい。それだけで戦争へと挑めるのである。男ならば守るべきものは何か、それは女の子の笑顔。それこそが何より守るべき宝物。愛すべき馬鹿ども、命を賭けるもののふとして。とってもいい顔で戦争に臨んでいくのである。

 

 

正に英雄譚、いつもは決めきれぬ三枚目でありつつも、決める時にはきっちり、格好良く決めて見せる二枚目として。痺れるような英雄としての活躍が迸る、爽快感に溢れる面白さのあるこの作品。心を熱く燃やしたい読者様は是非、この作品を読んでみてほしい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

弱小国家の英雄王子 1 ~最強の魔術師だけど、さっさと国出て自由に生きてぇぇ!~ (オーバーラップ文庫) | 楓原こうた, トモゼロ |本 | 通販 | Amazon