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読書感想:魔女と傭兵 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で今までの常識が何も通用しない異大陸に到着し、冒険者と荷物持ち兼護衛と言う形でこの世界に馴染みだしたジグとシアーシャであるが。前巻ではシアーシャのタガが外れた力が見せられた訳であるが、今巻では何が見えるのか。それはジグの特異さ。今まで傭兵と言う生き方を貫いてきたからこその、培われてきたものと処世術が見せられていくのが今巻である。
「ああ、俺は適当にやっているよ」
血と剣戟に塗れた平和な日々が続く中、シアーシャがひょんな事から臨時パーティに加入する事となり。それはつまり、ジグからすれば降ってわいた休暇、のようなもの。だがここで例えば、酒場で昼間から飲んだくれるのがこの大陸の普通の傭兵、であるのかもしれない。しかしジグは違う。街の地形と店の把握、更には掘り出し物を探して街をぶらついたりする中。何か探しものをしていたらしいイサナと遭遇し、逃げようとして捕まってしまう。
「言っておくが、高いぞ」
彼女の悩み事、それは種族の子供達の失踪。察するところ、マフィア絡みの誘拐事件。しかしイサナ達異民族に対し、治安の者達は冷たく。 シアーシャに危機が及ぶか、という危惧も逃げ道を潰され。溜息を吐きながらジグは捜査に加わる事となり。賞金稼ぎであるライカとも知り合い、その危険性を許容した事で気に入られ。ジグの裏社会的な考え方で子供達が捕まっていると思しき場所を看破し。少数精鋭で、疑わしき場所に向かう事となる。
その場所にいたのは意外な敵、しかしジグとライカの敵ではなく。事件はあっという間に解決し、マフィアとの繋がりも出来る。
「いったい何を買うんでしょう? 私も仲間に入れてくださいな」
が、しかし。彼が巻き込まれる騒動はこれだけではなかった。ふと出会った、冒険者殺人事件。被害者となった者が所属するクラン、「ワダツミ」の面々が、使用された武器がジグの使うものと同じ種類、という情報から誤解でジグを疑ってしまい。彼等の本拠地に誘い込まれ、武器なしの状態で手練れたちを制圧する羽目になり。無事誤解も解けたら、誤認で襲撃と言う「ワダツミ」の大いなる失敗、という事実が残り。 手打ちの条件を押し付けられそうになる中、女を押し付けられそうになったジグの元に駆け付けたシアーシャが、鋭い独占欲を放ち。貸し一つ、という事にして示談にする事となる。
「だが覚えておけ。力とはいつか必ず、より強い力に押し潰されるものだ」
ジグではない、ならば犯人は誰なのか。シアーシャも襲われた事で、ジグにとっては他人ごとではなく。ジグの武器も作った職人繋がりで犯人が判明し。 弱きを踏み潰す事に快楽を覚える殺人鬼に、ジグは怒りと共に死、という結果を突き付ける。 弱きを潰す、相手の流儀のそのままに。
より様々な所と繋がりが出来、二人のヤバさも知られていく今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。