読書感想:午後4時。透明、ときどき声優2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:午後4時。透明、ときどき声優1 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、良菜と紫苑、全く違う人生を歩んできて、けれど声がよく似ている二人。前巻で紫苑により良菜は声優の世界に本格的に引き込まれた訳であるが、画面の前の読者の皆様もそろそろお察しであろう。そもそも、入れ替わりなんてずっとうまくいく訳がないのだ、という事を。既にバラしてしまえば、声優としての人生に傷がつくことは明白。それでも、彼女達は選ばなければいけないのだ、どうするのか、という事を。

 

 

その選ぶ時は、既にすぐ側に来ている。そして向き合わなければいけない、というのが今巻なのだ。

 

「別の役者として、生きるべきではないですか?」

 

良菜の方の仕事として決まった、「おやすみユニバース」。その監督である塔ノ沢より突き付けられる現実。キャスト発表の二カ月後までに考えてほしい、というお願いをされ。考え始める中、良菜、紫苑、二人にそれぞれ大きな仕事が舞い込んでくる。

 

紫苑は、来年リリースの対策ソーシャルゲームの、女性主人公。良菜は、「おやすみユニバース」の共演者とのラジオ番組。

 

早速収録の現場に向かった紫苑は、現場で相棒としてたたき上げの声優、透と関わる事となり。良菜は紫苑として、相方である何でも全部やりたい声優、優花と友情を結ぶことになる。

 

「わたし、良菜にはなれないかあ・・・・・・」

 

その最中、良菜に舞い込んできたのは十くらい上の年上女性の役。 期限も近づく中、紫苑は試しに良菜になりきってみようと試し。だが結果として、「透明」な良菜の代わりにはできないと言う事実を突き付けられ。その事実と隔たりから、紫苑は自分の意思で入れ替わりをばらす事を選ぶ。

 

 

無論、炎上も混乱も巻き起こる。賛否両論、色々な意見が舞い踊る。しかし、二人にとってはそれよりも問題があった。 真実を知った透が紫苑に、良菜に劣ると端的に突き付け。自身の美学を傷つけられた優花は、良菜に対し怒りを向けて。結果的に大切な時期なのに、二人ともスランプに陥ってしまったのだ。

 

ではどうすべきなのか。合宿を経て、良菜と紫苑はそれぞれの方向に向かう。良菜は優花の大切にしている美学、その一端をライブで垣間見。 紫苑は透の言により自分の原点、まだ何者でもなかった小学生時代の思いを辿る。

 

思い出すものがある。 見つけた戦い方がある。

 

「「さあ―――黒く塗りつぶそう!」」

 

 

「―――あなたと、とても長い夢を見たんだよ」

 

 

だからこそ、その全部を今、焦がれるものを、熱を、全部。叩きつけ、見返して。今度は良菜に導かれ紫苑の中に熱が灯り。 二人でまた、今度は並んで同じ道を歩き出すのだ。

 

透明な中に熱さ溢れる、前巻にも増して面白い今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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