読書感想:痴漢されそうになっているS級美少女を助けたら隣の席の幼馴染だった8

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:痴漢されそうになっているS級美少女を助けたら隣の席の幼馴染だった7 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さてこの作品は今巻で最終巻である。という訳でここからは前巻までの内容のネタバレも気にせず書いていくのでご容赦願いたい。前巻、姫奈を選び彼女に思いを告げる事を選んだ我らが主人公、諒である。では最後はエピローグまで甘々か、と思われた読者様はどれだけおられるだろうか。先に言ってしまうがそんなことはない。この作品は最後までもどかしく、時にほろ苦い展開もあるのである。

 

 

「わたしも。好きだよ、諒くん」

 

「おめでとう。良かったじゃん」

 

しかし一先ずは、二人は付き合いだした。今までできなかった事をする為に、まずは周りに報告し、諒の周りに立っていたフラグをきちんと畳んで。2人の関係を周りに受け入れてもらう為に行動しながら、クリスマスにデートをしたりと恋人らしい時間を積み重ねていく。

 

だが、すぐに波乱の芽は芽吹く。街角でスカウトを受けた事で姫奈は新たな世界へ挑む事を決意し。妨げになってはいけないと諒は応援に回る。しかし、やはり姫奈には人を惹きつけるだけの華があった。初めは端役から、だけどそこから少しずつ人気が出ていく中で。恋人と仕事、二つの間で揺れ惑い両立が難しくなっていく。

 

何事にも本気だから、中途半端には出来ないから。だからこそ両方を選びたい、けれどそれが出来ない程度には彼女はまだ未熟。

 

そして諒もまた、自分の欲を上手く出せるわけでもなく。独占したいと思えど、それは出来ぬと尻込みしてしまい。結果的に二人はすれ違ってしまう結果を生み、少しずつ別の方向を向いていく。

 

「嫌なら別れたらいいじゃないですか」

 

それが出来れば簡単である。だけど心は割り切れない。諦めたくない、無くしたくないという思いが叫ぶ。

 

「だから、わたしたちの関係はちょっとだけお休みしない?」

 

だからこそ選んだ、一度だけお休みする道を。相手の思いを信じて、結論を預けて。

 

春まで、と期限を決めて全力で頑張る彼女を見守って、そしてまた春が来る。まるでデジャヴのように、また彼女を助ける時が来る。

 

「好きなんだ、俺。おまえのこと」

 

そして改めてまた伝える、今度こそは真っ直ぐに。もう充電期間は終わり、後は抜けたものを埋めるだけ。二人の関係はまた、音を立てて動き出すのである。

 

もどかしく、ハラハラとさせながらも駆け抜けていく最終巻。最後まで是非、見届けてあげて欲しい。

 

Amazon.co.jp: 痴漢されそうになっているS級美少女を助けたら隣の席の幼馴染だった8 (GA文庫) : ケンノジ, フライ: 本