前巻感想はこちら↓
読書感想:推しに熱愛疑惑出たから会社休んだ - 読樹庵 (hatenablog.com)
擦り切れた心を重ね合わせるかのように、お互いの心をお互いで埋め合うように。前巻でアイドルとファンという線引きを超え恋人同士となった吾郎と愛未であるが、しかし新たにアイドル、そしてファンという前と同じようで実は違う形に戻ったと言っても、まぁ良いのかもしれない。一番遠い、けれど一番近い。そんなところから育んでいく恋はどんなものとなるのであろうか。
「何かあったらすぐに連絡して。駆けつけるから」
愛未が風邪を引いた時に駆け付け、ちょっと不謹慎だけれど二人きりの逢瀬を楽しみ。どんどんと、愛未にとって吾郎は大切な存在となっていって。
「彼が居なくてもアイドル活動できる?」
「絶対に、大丈夫です」
そうなるという事はリスクを抱え込むという事。彼を支えとするのならば、覚悟しなければいけない。自分と言うアイドルの存在の根底を、彼に預けるという事を。けれどそれも、覚悟の上。絶対に全部取って見せると愛未は宣言し、その言葉の通りに恋も復帰も精力的にこなしていく。
だが、やはり社会人と芸能人では中々時間が合わぬもの。突発的に彼の誕生日を知っても、其処に合わせて予定を組める訳でもない。それでも一生懸命に誕生日プレゼントを選んで。愛未の誕生日も少し先であるから、ちょっと早めという事でお互い誕生日プレゼントを贈り合う形となり。何とか訪れたオフの日に、彼女の家でご飯をごちそうになったり、思い立ったが吉日という事でレンタカーを借りて出かけたり。社会人らしいデートで、だが内心は遅れてきた青春を取り戻すかのように初々しく。少しずつ二人は、絆を深めていく。
「桃花愛未、いや、山元美依奈さんとどういうご関係なんですか」
そこに忍び寄るのは波乱の気配。「サクラロマンス」のメンバーであり、愛未を尊敬していたが故に目標を見失ってしまった後輩、華。愛未が相談不足で辞めた事が原因で煮え切らぬ思いを抱えたままバラバラになりつつあるグループを見つめる彼女は、吾郎との関係を疑い彼に接触し。週刊誌へのリークを武器に彼を脅しにかかる。
「言葉だけじゃ、ダメなんです。疲れているようなら休ませてあげないと」
それを盗み聞きしてしまい、怒りに駆られる愛未。彼女の耳に届くのは、彼女の事を何よりも考え理解しようとしてくれている吾郎の言葉。それは憧れ、を抱くだけでは見えぬものを見ているからの言葉。その言葉にまた、彼女は救われていく。
「言わなくて良い。でも、我慢はしないで良いから」
何も言わずとも察してくれて、欲しい時には受け止めてくれて。その支え方は吾郎にしか出来ぬもの。彼に支えられ、何を返せるのかと星空に問いを投げかけて。愛未の新たな戦いは幕を開けるのだ。
更に温かみの増したラブコメが楽しめる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
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