読書感想:義妹は浮気に含まれないよ、お兄ちゃん2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:義妹は浮気に含まれないよ、お兄ちゃん1 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で栞と付き合いだしながらも義妹である愛歌にも迫られると言う、二人の間で板挟みとなってしまった主人公、蒼であるが。二人が彼に向ける愛というのはもはや疑いようもなく、全く以て彼しか彼女達にはいないと言う程に彼女達の思いは強い。そして、板挟みになりながらも蒼は二人のどちらかを選ぶことは出来ていない。選べていないと言う事は、一体どういうことなのか。

 

 

その答えは簡単である。愛歌のいる今までの日常、栞のいる今までとは違うリア充の日常。陰と陽、二つの世界の狭間に立つと言う事だ。そして栞と共に過ごす、恋人同士になっていくと言う事は、必然的にリア充の世界に関わっていかなければいけないという事である。

 

「主導権はお兄ちゃんにあげる」

 

前巻、栞の手で変えられた蒼を見て愛歌は激高し、彼等だからこその愛欲コミュニケーション、歪かもしれぬ触れあい方が明かされ。愛歌によって新たなルールが提示され、そのルールを受け入れ新たな日々が始まる。

 

 昼の世界では、栞と恋人同士。高嶺の花である彼女と恋仲になった事で否応なく注目を集め。ファッション等リア充らしい話題に踏み入れ、栞と共に遊園地や水族館、はたまた江の島まで足を延ばしたり。リア充らしい輝きに満ちた日々。それは彼にとっては未知の世界。今まで知らぬ世界で生きていこうとするのは、無論栞と共にいるため。

 

「そのために、お兄ちゃんについてもらわなきゃ、困る」

 

そんな彼へと、ズルいと言葉を投げかけながら。愛歌は彼といつも通りの関係を続けながらふとした瞬間に理性へと攻撃を仕掛け。自分の夢の為には彼の事が必要だと、彼の事を必死に繋ぎ止めようとする。

 

 愛歌のいるいつもの世界か、栞のいる新しい世界か。二つの世界の間で揺れ惑う中、結果的に彼と言う存在が二つの世界を繋ぎ始める。だがそれは決して良い事ばかりではない。彼だからこそ適合できただけで、周りの者達も普通に適合できるとは限らない。

 

「おまえらと一緒に漫画やアニメの話をしてた方が楽しいよ」

 

新しい世界に生きづらさを覚え、いつもの世界に安心感を見出し。だからこそ、愛歌との用事と栞との用事が被ってしまった時に選んでしまったのだろうか、そちらの選択肢を。

 

「やっぱり俺、おまえのことが世界で一番好きだ」

 

衝動と共に湧き上がる告白の言葉。その言葉を栞は知らない。彼の心を全部つかみきれぬ彼女の心が傾き始めているという事を、蒼はまだ知らない。

 

果たしてその選択肢は、何を導いてしまうのか。

 

黒いものが蠢きだす、背徳がより深まる今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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