前巻感想はこちら↓
読書感想:ステラ・ステップ - 読樹庵 (hatenablog.com)
・・・・・・嗚呼、何とまぁ世界が残酷な事であろうか。こんなにも世界は、苦しみと救いの無さに満ちているのか。前巻、相棒であり大切な者であるハナに纏わる衝撃的な事実を知ったレイン。しかし、衝撃に打ち沈む暇などありはしない。負けた者の常として、舞台は「砂の国」から「鉄の国」へと移る今巻。先にお伝えしておこう。前巻にも増して救いが無いのが今巻であり。「砂の国」がまだマシであった、というのが分かるのが今巻なのである。
「鉄の国の『アイドル』には、道具以外の意味なんて必要ないんだから」
知ってしまった秘密が心の壁を作り、知ったきらきらが、その輝きへの執着を生み。しかし「鉄の国」について早々、レインとハナは引き離され。それぞれ単独で動く事となってしまう。
何故そうなるのか。それは「鉄の国」のルール。沈まない太陽が照らす何処までも赤いこの国のアイドルは、「鐵組」と「鉱組」に分けられ、戦舞台に立つのは「鐵組」のみ。言わば「鉱組」は候補生のようなものであり、レインは今までの功績から「鐵組」となるも、ハナは「鉱組」からスタートする事となったのである。
だが地獄はここからが本番だった。「鐵組」となったレインが見るのは、この国のアイドルの実態。「砂の国」とは違い、一切合切を削ぎ落しアイドルをただ、兵器として扱う。その為にレッスンは組まれ、「総帥」と呼ばれる絶対権限者の元でアイドルは何もかもを削ぎ落され兵器として染まる。そして「鉱組」はアイドル候補生、というよりアイドル未満。名すらなく番号で呼ばれ、酷い格差を最初から押し付けられている立場。心痛めハナを求めれど、その手は届かず、それどころか「鉄の国」のアイドル達からはスパイではないかと疑われ。板挟みとなりながらも、彼女はまた兵器に戻ろうとしていく。
そんな彼女を最初に押しとどめるのは、ハナなのか。否、「砂の国」で蒔いた芽だ。復帰したクローバーとの戦い、そしてあのライブで出来ていたファンとの出会い。その出会いが彼女に力を与えるも、それは「鉄の国」のやり方ではなく。レインは「特別訓練場」送りとなってしまう。
特別訓練場、ただ心を吸い取られていくそこに光は差し込むか。無論だ、光はそこに在る。レインという星の輝きを見つけハナがそこへ飛び込み、二人は再会を果たす。
「わたしね、みつけたよ。わたしのいろ」
最後のピースはここに埋まった、彼女が居るからまた見えた。レインが高らかに歌うは己が見つけた彩の歌。その隣に立つのは当然ハナ。二人の歌は、この国に確かに変革の軛をぶち込む。
「二人がいてくれれば、大丈夫なんすよね?」
―――だがそれは、更なる地獄への入り口。確かに魅せたその力は即座に利用すべきものとして囲われ。アイドルとしてのきらきら、自分が取りこぼしたものを、そしてかの一つの光の真実を見せつけられた「 」が折れて囚われ。どうでもいいと言わんばかりにその穴は埋められる。
嗚呼、神は何処まで残酷か。 世界は何処まで彼女達に試練を課し、追い詰めるのか。今は未だ小さなそのきらきら、それを飲み込まんとする渇いた思惑の濁流。何処までも醜悪で残酷な世界のこの中で。小さな煌めきでしかない彼女達は、一歩を踏み出せるのか?
より厳しく、鉄のようにより冷たくなる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
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