読書感想:コンビニ強盗から助けた地味店員が、同じクラスのうぶで可愛いギャルだった3

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:コンビニ強盗から助けた地味店員が、同じクラスのうぶで可愛いギャルだった2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品もいよいよ今巻で最終巻、大団円を迎えるべきである巻であるのだが、果たしてこの作品、無事に終わるだろうかと画面の前の読者の皆様は思われたのではないだろうか。リクと彩奈、二人の関係はどう考えても結ばれるべき関係には見えないし、まるで世界が許さないと言わんばかりに、幸せになろうとした途端に辛すぎる事実が明かされる。だとしても、この二人は幸せにならねばならぬのだ。それこそがきっと、私達も望んだ事だから。

 

 

しかしそこにたどり着くまでには、紆余曲折がこれでどうだと言わんばかりに襲い掛かってくる。乗り越えて見せろ、と言わんばかりに攻めてくる。その大攻勢の中、藻掻いていくのが今巻なのである。

 

「これだけは絶対に譲れません」

 

前巻の最後に判明した衝撃の事実の後、再び今まで住んでいた町に舞い戻り。自責の念で自分の心を傷つけ過ぎた彩奈は、心の防衛本能で自己喪失に陥ってしまい、リクは我が儘を押し通し、陽乃やカナ、門戸さんの協力を得、再び同棲生活を始める事となった。だがそれは彼にとって大きな負担をかけるもの。彼がいないと何もできない彩奈を放置することは出来ず、付きっきりとなり。それでもリクは彼女の側に居る事を選んでいた。

 

「つらい人生でいい」

 

例え彩奈がどんな罪を背負っていようとも、それで良いと。自分が彼女を愛しているのは変わらない、全部背負ってでも、というその思いが届き、彩奈はやっと自分を取り戻す。

 

 だが、ここからがもう一波乱。リクの誕生日にやってきた祖父の、遺族としての言葉。彩奈と思いを重ねた後、姿を消した彼女を探し向かった事故現場。そこで巻き起こるフラッシュバックにより負荷がかかり、リクは彩奈たちと過ごした記憶を喪失してしまったのである。

 

それもまた当然のことかもしれない。思い返してみれば、彼自身が事故の事を乗り越えた、という具体的な描写はあったか? 彩奈を支え続ける事だけに注力し、彼自身は目をそらしていた心の傷。それが帳尻を合わせるかのように襲い掛かってきたのである。

 

彩奈への思いを忘れ、陽乃の側で笑う彼。彼を見、それで良いと身を引こうとする彩奈。彼女へ陽乃が持ち掛けたとある賭け。

 

忘れた記憶は、無くした心は戻るのか。無くした筈の心が、記憶が頭を叩く。胸騒ぎに導かれ、記憶を探して彷徨う中、辿り着いた場所で記憶は戻る。

 

「一緒に考えよう、幸せになる方法を。支え合って一緒に頑張ろう、幸せになるために」

 

そして全ての始まり、何もかもが終わって始まった場所で。彩奈に届けるのは、未来を願う言葉。一方的に支えるのではなく支え合う、世界が辛くても立ち向かって生きていくと言う言葉。

 

2人の関係は、決して歓迎されるものではないのかもしれない。許されざる関係、なのかもしれない。

 

だけどこの二人には幸せになる権利があり義務がある。そして選んだ未来、当たり前で平凡、けれど幸せな家族となっていくのである。

 

これにて終幕、どっとはらい。最後まで皆様、是非楽しんでみて欲しい。

 

コンビニ強盗から助けた地味店員が、同じクラスのうぶで可愛いギャルだった3 (ファンタジア文庫) | あボーン, なかむら |本 | 通販 | Amazon