読書感想:破壊神様の再征服 ~世界征服をしたら救世主として崇められるんだけど~

 

 さて、もっとも力を持たせてはいけないタイプの人間とは、どんな類の人間であろうか。無知で無邪気なタイプにこそ、力は持たせてはいけないのかもしれない。大人よりも寧ろ子供に、世界を滅ぼせるような力を預けてはいけない筈、かもしれない。さてそういった意味で、この作品の主人公であるバイラヴァ(表紙左)はどちらの類なのであろうか。

 

 

彼はどちらかと言えば、子供、なのかもしれない。しかし悪い意味での子供ではなくいい意味としての子供っぽさを持っていると言えるかもしれない。寧ろこの作品における世界では、彼の力こそが求められているのだ。

 

破壊神であるからこそ、破壊こそを己の本分とし、一人で世界征服を目論み。世界中の神々と生命たちを敵としながらも、そのほぼ全てを壊滅させると言う悪行を成し遂げ。残った神達により封印された彼は、千年の後にあっさりと復活して見せる。

 

「えぇ・・・・・・何これぇ・・・・・・?」

 

しかし目覚めた世界は大幅な変貌を遂げていた。神の代わりに「精霊」と呼ばれる存在とその先兵となった者達が人間を支配し虐げる今の世界。一先ず目についた村に降り立ち、先兵である人間達と戯れのように戦う中で感じるのは、かつて敵対していた神の力。

 

「貴様はもういいと言っただろうが」

 

だが、そんなものはバイラヴァの敵とはなり得ず軽い一撃で吹っ飛ばし。何故か村の面々から救世主と崇められてしまうも、数十キロ先の街に神を名乗る者が取り仕切る宗教があると聞き、そこを目指す事となる。

 

かの場所で出会ったのは、かつてバイラヴァを気にかけていた女神、ヴィクトリア(表紙右)の使徒であるレナ。そしてかつて敵対した神の一人であるアールグレーン。かつて精霊との戦いの中で神が寝返りヴィクトリアを売った、という過去を聞きとりあえずアールグレーンをぶっ飛ばし。気紛れに彼はヴィクトリアを助けに行く事を決め、レナと共に囚われている場所へと向かう。

 

捕えているのは科学者タイプの精霊、ヴェニアミン。ヴィクトリアを実験対象とする彼が明かすのは、精霊の事情。

 

「我も遠慮なく破壊させてもらおう」

 

しかし、そんな事は関係ないしどうでもいい。バイラヴァにとって大事なのは只一つ、こいつが目の前に立ち塞がる、それだけ。やっぱり多少強化されていてもその力は及ばず。破壊神の一撃で、ヴェニアミンは命を落とす事となる。

 

しかし心のままに突き進む彼はまだ知らなかった。ヴィクトリアが自分に向けるようになった思いに。そしてこの世界にまだ自分の信徒が生き残っているという事に。

 

この作品は、一撃の爽快感があるお話である。そして同時に癖の強すぎる周りの面々に破壊神が振り回され胃を痛めていく、そういったコミカルさがある作品なのである。

 

そんな面白さが好きな読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

破壊神様の再征服 ~世界征服をしたら救世主として崇められるんだけど~ (ダッシュエックス文庫) | 溝上 良, さなだケイスイ |本 | 通販 | Amazon