読書感想:魔王の元側近は勇者に転生しても忠誠を捧ぐ

 

 さて、時に転生というのは異世界もの、ラノベだけで起きる訳ではなく、現実世界においても転生らしき事例は確認されている、というのは画面の前の読者の皆様もご存じかもしれない。しかし転生前の人生の記憶、というのは大抵幼年期に消えてしまうものであるらしい。それは幸運な事なのか、それとも不運な事なのか。今の人生において前世の人生の記憶というのは不要、と考えると意外と幸運と言えるかもしれない。

 

 

この作品はそんな、「転生」から始まるお話であり。魔王様と従者たちのすれ違いハーレムファンタジーなのである。

 

人族と魔族の争いが長い間続いていたとある異世界。魔族の中の八人の魔王により生み出された、魔王達と忌まわしき勇者の血を混ぜられ造られた「魔人」、バルド。生まれてすぐに憤怒により魔王を滅ぼし、自身の滅びをも望む魔族達の願いを叶える為魔王として軍勢を率い。人類を根絶し、その道程で魔族達も側近たちも死に絶え。

 

「これでいい、など―――俺が認めん」

 

自らに付き従った六名の臣下。銀狼プラウド、黒竜グリドラ、真祖レイニー、暴鬼グラトロス、邪精霊シータ、夢魔ベリアエル。その生き様と願いをこれで終わりとは認めんと惜しく思い。姿を現した神を受肉させ、自身の消滅と引き換えに魔族の撤廃、そして臣下たちの新たな世界への転生を認めさせ。心満足して消滅した。

 

しかし、世界が新たな平和な世界へと生まれ変わってどれだけ経った頃か。受肉させた女神、今は聖女であるエウロパの手によりバルドは生まれ変わる。配下たちを転生させた影響で脆くなってしまい異世界の魔物からの襲撃を受ける世界を守るために。

 

「ふ―――よくぞ俺の目論見に気付き、馳せ参じてくれた」

 

この世界にある人類の生存圏、八つある学院都市。その中の一つである第二学院都市テュロスにまずは赴き。そこにいたのは元銀狼、ルルナ(表紙)と元黒竜、リド。再会を喜ぶも彼女達はバルドがこの世界を再び支配するために彼女達を先兵として送り込んだ、と解釈しており。しかし一先ず生を望んでくれたのは嬉しいので、理想的な環境を提供するという方向性で行く事を決め。一先ずルルナとリドを、学院長であるヒュラスを実力で分からす形で引き抜き。エウロパが学院長であり今は魔物に占拠されている第0学院都市をさっさと取返し。この都市を拠点とし動くことになる中。元配下たちはそれぞれ違う都市から、急ぎ主の元へ馳せ参じる。

 

元真祖マリアベル、元暴鬼ラトニ、元邪精霊ヴィータ、元夢魔のロゼア。彼女達に示さねばならぬのは人間としての幸せ、生きる道。その生きる道を教える為、学院長として課題を出してみたり。人間として魅力的な彼女達に謎の心の動きを感じたり、すぐ魔族としての考え方にいこうとする彼女達に慌てたり。

 

「もう一度、死を味わえ。今度は魂すらも塵にしてやろう」

 

だけどそれは、彼が望んでいた時間。願っていた配下たちの幸せ。その幸せを阻もうとする者がいるならどうするか。答えは簡単、かつての怒りを垣間見せ圧倒的な魔術で一撃必殺、に尽きるのだ。

 

真っ直ぐハーレム、ちょっとドタバタ、だけど熱さのあるこの作品。ファンタジーで心を燃やしたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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