読書感想:ママ友と育てるラブコメ2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:ママ友と育てるラブコメ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻を読まれた読者様はこの作品の主人公とヒロインである、響汰と澄が「ママ友」という関係を通じて絆を深めていく、という構造についてはご存じであろう。普通に考えればまぁアレな環境かもしれない。しかし二人はそれを納得済みであるのでまぁ良いとして。画面の前の読者の皆様は、二人が絶対に手に入らないもの、と聞かれて何を思い浮かべられるであろうか。

 

 

答えは簡単。それは想夜歌と郁の、「親」という立場だ。当たり前である。兄として、姉として愛することは出来る。心を籠めることは出来る。だが、「親」というものは逆立ちしたってなれる訳じゃない。そして子供と言うのは純粋であり、時にその純粋さが自身を傷つけるのである。

 

「ああ、仕事」

 

間近に迫った親子遠足。当然、響汰と澄の二人にとっては見逃せぬイベント。お菓子を準備したり、弁当を作りたい澄の為に、卵焼きの作り方を教えたりしながら時を待つ中、いつものように夜遅くに仕事から帰宅し酒に浸る響汰の母親、琴子は当然のように不参加を示す。

 

 自分はまぁ納得出来ている。だが想夜歌の事はもっと気にかけてほしい。ジレンマ的な思いの中で響汰の目には、楽しげにしながらもどこか寂しげな想夜歌の様子が焼き付く。更には折しも近づいている、想夜歌の誕生日。だがそれにも琴子は仕事だから、とまるで言い訳のように口にし不参加を決めてしまう。

 

それで良いのか、まるで心をひりつかせるかのような愛憎入り混じる思い。何故こうもざわつくのか。何故母親は自分達を見ようともしてくれないのか。

 

「響汰も寂しかったのね」

 

いつもだったら一人で抱え込んでいたかもしれぬ。だが、今は違う。自身も似たような境遇だからこそ分かってくれる澄は、子供として拗ねた響汰の内面を察し、自分達のようにはなるなと励まして。その励ましでもう一度、母親と向かい合う事を決める。

 

「だとしても、母さんは大丈夫だろ」

 

酒の力を借りず向き合い、腹を割らせて聞き出したのは不器用な愛の本音。毒親である自身の両親と同じ血という事実があるからこその臆病。それでもきちんと愛している、という本音。

 

なればやるべきことは何か。簡単である。子供だからこそ取れる手を使ってしまえばいい。仕事場にいる母親の元へ行けるただ一つの方法を使って。やっとこさ二人を向かい合わせた後、いつものメンバーで誕生日会へとなだれ込む。

 

「今日は、お兄ちゃんとして頑張ったものね」

 

そんな彼にも、ちょっとした心温まるご褒美を。また一つ、距離が縮まると言う展開を。

 

同級生であるひかる(表紙左)や周囲との関わり合いも増える中、またちょっと距離が縮まる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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