読書感想:恋は暗黒。3

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:恋は暗黒。2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品は想星とくちなという、二人の暗殺者の暗黒に過ぎるラブコメであるというのはこの作品を読まれている読者様であればご存じであろう。死なないだけの想星、殺してしまうくちな。そんな二人のラブコメは中々にもどかしく、じれったい。その理由の一員として、やはり二人は何者かの「駒」でしかない、というのもあるだろう。そんな二人のラブコメは意外と、薄氷の上、であるというのが分かるのが今巻なのである。

 

 

「ありがとうって、ちゃんと言わないと・・・・・・」

 

前巻の暗殺の中、助けてくれたことにお礼を言いたい想星。だけどそのお礼までの距離は遠くて。じれったく手を伸ばそうとして、ひっこめて。結局勇気を出せぬ日常の中、くちながスマホを持っていないと言う事が判明し。代替手段として皆で交換日記を回す事となり。文章を通じてどこか懐かしい方法で交流する事で。少しずつくちなの中にも、皆との日々を望む思いが芽生え始めようとしていく。

 

「感謝を忘れてはいけないわ、静寂」

 

だがそれを阻む者が、くちなの側にもいる。「大御様」と呼ばれるくちなに指示を出す相手。実質、くちなという「駒」を戦力として飼育している者。嫌いだし別に敬ってもいないけれど、従うしかなく。新たな指令により彼女は、新たな任務に身を投じる。

 

そして想星もまた、面倒事に行き当たっていた。チート持ちはいない筈、だから簡単な筈の犯罪組織壊滅依頼。だが、情報が漏れていた気配もないのに何故か仕留めきれず。更には犯罪組織の長を追う中、「悪魔の手」の持ち主を探しているという全裸の鋼鉄男が現れ想星の妨害をしてくる。

 

身体を鋼鉄に出来ると言う、その力は攻撃手段に関しては並みの手段しか持たぬ想星にとっては天敵に過ぎる相手。そんな敵をぶち殺すにはどうすればよいのか。出来る事をするしかない、何か。結局それは自爆前提、自殺前提のごり押し策しかない。決戦の舞台となる捨てられた街、犯罪組織の首領を追う中で。想星は鋼鉄男と決着をつける為に死闘を繰り広げる。

 

「この景色を一生忘れない」

 

「僕も」

 

その先に待っていたのは、望んだ平穏。特別な夜に近づくくちなとの距離。しかしそれはすぐに嵐に覆われる。死んだ筈のかつての標的が、最悪な手段を以て迫りくる。

 

一難去ってまた一難、どころでもなく三つくらい災難が来ている気がする今巻。暗黒すぎて進まぬラブコメは、どうなってしまうのか。

 

シリーズファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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