読書感想:転生王女と天才令嬢の魔法革命5

 

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読書感想:転生王女と天才令嬢の魔法革命4 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、およそ一年ぶりとなる最新刊であるが、同時にこの作品のアニメ化が公表された、というのは画面の前の読者の皆様はご存じであろうか。ずっと読み続けている私としてもうれしい限りである。 さて、前巻では既得権益や魔法の神秘性の崩壊、という所にアニスやユフィが立ち向かっていったわけであるが。彼女達は今度は一体、何に立ち向かわなければいけないのか。

 

 

その答えの一つとしてあげられるのは「周りの人間の想い」、であろう。急に新たな文化への革命の中心となってしまったアニス、そして彼女を支える為に女王となり、それどころか文字通り人間を辞めてしまったユフィ。彼女達の周りの人間達が何も思わぬ訳もなく。その部分へと、焦点を当てていくのが今巻なのである。

 

魔学と魔道具をさらに発展させるのが、王位継承権を離れたアニスの使命。しかし彼女が動き出すと劇薬でしかなく。まずは準備を整える為、アニスには休暇が与えられ。新しい研究に精を出したり、夜会に出たり。久方ぶりに彼女なりに落ち着いた時間を過ごすアニス。 そんな彼女の前に姿を現したのは、ユフィの弟であるカインド。姉に思う所がありながらも今は女王であると言う事で身を引く彼の態度に、何か引っかかるものを感じ。自身もまた弟であるアルと仲たがいしたと言う過去を持つからこそ、彼の心を何とかしたいと願い。

 

「全てを元に戻すようなことは出来ないし、なかったことにも出来ないんだ」

 

こっそりと彼の元を訪ね、真剣に正面から向き合い。もう何もかも失いたくない、ユフィを幸せにしたいと言う思いの元。正面から思いを伝え、納得を得るアニス。

 

その後、彼女とユフィは魔学の発展に必要な魔石が多く眠る、未開の地が多い東部に新婚旅行も兼ねて向かう事となる。さて、画面の前の読者の皆様は東部と聞いて誰かの事を連想されないだろうか。

 

 そう、東部とはアニスの弟であるアルガルドこと、アルが流された土地である。そちらに出向く以上、必然的に再会は齎され。東の大山脈の向こうから流れてアルの元に逗留している、「リカント」の少女アクリルとも出会い。アニスはアクリルと、そしてアルと向かい合う。

 

この国には何も関係ない、だからこそ全てが真っ直ぐ純粋に見える。そんなアクリルに敵愾心を向けられ、彼女がアルへ向ける思いをくみ取り。逃げる事を止めたいから、もう遅いけれど。それでも向き合う、大切な弟と。

 

「―――俺は、貴方の力になることが出来る王になりたかった」

 

「―――助けるよ! 求められたら、助けに行ってたよ!」

 

 今更ながら明かされる、アルの革命の絵図、その先の未来。彼が抱いていた思い。もう何もかも終わってしまった、過去は変えられない。それでも今、ここにあるものは少しだけでも変えられる。今更ながらもアニスとユフィはアルと和解し。恩赦により減刑されたアルは、未開の地の開拓に携わる事となる。

 

「貴方は私が認める魔法使いですよ、アニス」

 

遠くには未知の脅威あり、まだまだ魔学は始まったばかり。だけどもう大切なものはここにあるから。だからこそ進むべき道はもう迷わないのだ。

 

シリーズファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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