読書感想:転生王女と天才令嬢の魔法革命6

 

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読書感想:転生王女と天才令嬢の魔法革命5 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻では魔学という学問を本格的に始めたアニスと、精霊と契約し本格的に人間を辞めてしまったユフィ、の周りの者達の思いを描いた訳であるが。前巻の顛末の中、芽生えた遠方の不穏というものは前巻を読まれた読者様であればご存じであろう。婚約破棄騒動の原因ともなった、バレッティア王国にとっての大敵、ヴァンパイア。そんな者達との戦いは、すぐそばまで迫っているのである。

 

 

その戦いは、間を置かず始まる。それこそすぐに、今すぐにでも。準備の時間も取らせてくれず、決戦に挑むのが今巻なのである。

 

「私たちが想像していたものより、ヴァンパイアの力はとんでもないものだったわね」

 

ヴァンパイアに対しての対策を立てる為、一先ずの情報の中で出した能力検証の結果。それは思ったよりも強敵、というものであり魅了だけではなく、魔石に引き継がれた経験をそのまま継げる事による驚異的な成長性というもの。一先ずは魅了についての対策を練る中、レイニの申し出により恐らくヴァンパイアである彼女の母親について調べる事となり、ティルティを引き連れアニスは東部へ向かう事となる。

 

彼女の母親の墓がある出身である孤児院、父親との出会いの場となった冒険者ギルド。少しだけ残り香のある母親の足跡をたどる中、レイニにより突き付けられるアニスがいずれユフィを置いていくという厳然たる事実。しかし、それを考えている暇もなく。冒険者達が森に感じた異変の調査に向かう中、暴走する魔物を操る、レイニの母親の事を知るヴァンパイアが姿を見せ。更にはアルの元に、王国から逃げてきたヴァンパイアが姿を現し、ルエラと名乗る彼女から母親の話を聞きだすことに成功する。

 

真理の探究、そして王国への復讐。前者の目的を突き詰めた、化け物がアニスたちの元へ迫る。その名はライラナ。真理の探究、その果てに辿り着いた「永遠」というものへの皆での回帰という目的を掲げ、全てを取り込むべく彼女が襲い来る。

 

「お前の言う幸福は、ただのエゴの押し付けだ!」

 

己の辿り着いた真理こそが絶対、エゴを押し通す彼女。それは正に、アニスがそうなるかもしれなかったもう一つの可能性。もしかしたら、出会いが違えば。分かり合えたかもしれなかった。だが、それはもう出来ない。アニス達にも貫くべき思いがある、それはライラナとは相いれない。だからこそ、ぶつかり合うしかない。

 

「アニスは、私の天敵だったんだね」

 

分かり合えたかもしれない、実際、戦いの中でお互いの想いに気付くことは出来た。アニスの願う永遠の中、ライラナは自分達の悲願の答えを見出した。だけど。背負ったものは降ろせない。だからこそ、最後までぶつかり合う。一瞬でも分かり合えた、天敵として。

 

「だから、これからもずっと私と一緒に生きて」

 

その果て、アニスが得た永遠。彼女もまた人間の範疇から踏み出して。ユフィと生きていける永遠を得、また歩き出していくのである。

 

一つの決戦が終わり、まだまだ世界が終わらない今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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