読書感想:ハズレ属性【音属性】で追放されたけど、実は唯一無詠唱で発動できる最強魔法でした

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。ファンタジー世界における魔法と言うのは、例えば炎や雷と言った視覚情報に表すとド派手なものが多いと思われるが、そんな魔法において「詠唱」というものが存在するのもご存じであろう。往々にして存在するそれは、所謂「音」である。声もまた音である。ではもしそんな大切な「音」を支配する魔法があるとしたら。それは最強の属性と言ってもいいのではないだろうか。

 

 

そも、「音」というのも立派な武器である。それが存分に示されているのがこの作品なのである。

 

「これからどうしよう」

 

異世界のとある国、そこに属する魔法の名家であるグレイフィールド家。その長男である少年、アルバス(表紙左)は生まれつき大きな魔力を持ち将来を渇望されるも、何故か発現したのは「音」属性と言う聞かれた事もないハズレ属性であり。手のひらを返され最後には弟であるアイザックに傷つけられ家を追放される。

 

失意もそこそこ、一先ず事態を前向きにとらえ。突然声が出なくなった王女の治療に名乗りを上げた者達の群に混じりたどり着いた王都。そこにある大図書館で見つけたのは、音属性の魔法書。そこに記されていたのは、唯一無詠唱が可能であると言う無限の可能性。

 

膨らむ期待、早く試してみたいと冒険者になったのも早々、魔物の大軍に襲われたところを竜騎士であるエレインに助けられ。更に、一人で魔物の大軍を倒した事でギルドの長であるエレノアにも認められる事となり。

 

その中、魔法書の中に人に声を与えると言う魔法を見つけ、それを行使した所、王女であるルルアリア(表紙右)の声が出るようになり。喜びも早々、彼は彼女に自分が声が出なくなった原因、呪いの源を探って欲しいと依頼され、その依頼を受ける事となる。

 

「これが音属性の―――僕の本気だよ」

 

しかし程なくして、彼の元に訪れる再会。父親であるザガリーに絡まれ、弟であるアイザックと戦う事になる中、彼の事を侮っていた弟は知る事となる。本気になればいるでも殺せる、音属性の本気と言うものを。そして本気を望んでいた自分を容易く踏み躙り、無自覚に、天然に。心をへし折っていく、アルバスの他人への無頓着な部分を。ある意味箱入りで育てられたからこそ、彼には人の心が分からない。故に弟の心を無自覚に傷つけてしまい、力を求めた弟は近寄ってきた魔族の誘いに応じ、闇に落ちてしまう。

 

「いいよ、一回だけだ」

 

炎に包まれる故郷、闇に落ちた弟を止められるのは自分だけ。なればやるべきことは一つ。今一度、繰り広げるのは真剣勝負。兄として、止める為に。力を果たし、試合に負けて勝負に勝つ。

 

その結果を汚さんとする魔族、心に滾る烈火の怒り。その怒りのままに力を解き放つとき。隠された力が目を覚ますのだ。

 

王道の逆転ものかつ、心を知る事での成長がある一度で二度おいしい今作品。王道的な作品が読んでみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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