読書感想:転生王女と天才令嬢の魔法革命4

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前巻感想はこちら↓

読書感想:転生王女と天才令嬢の魔法革命3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 全部解決、万事滞りなし、無問題、大・団・円ッ‼ ・・・と言っても過言ではないだろう前巻。楽しまれた読者様は画面の前にどれだけおられるだろうか。ではもしかしたら、楽しまれた読者様はこう思われているのではないだろうか? これ以上、果たして何を書くことがあるの? と。

 

 

そう思われている読者様、勿論そのお気持ちはよく分かる。言いたい事もよく分かる。前巻で大団円を迎え、辿り着くべき所に辿り着いたアニスフィアとユフィリアの二人。心の全てをさらけ出しぶつかり合い、お互い納得の上で選んだ道。そう、既にゴールインしていると言っても過言ではない二人である。

 

 が、しかし。王になる事が決まっても、心のままに研究に打ち込むことが出来る事になっても。それで終わりではない。ゴールにたどり着いても、そこは新しいスタートでしかないのである。

 

しがらみから解放され、研究に打ち込み開発した、タイプライター的な機能を持つ魔道具「念盤」。文字を打つことを簡単にしたその魔道具により、様々な改革の波を引き起こしながらも更に認められていく魔学。

 

 だがしかし、画面の前の読者の皆様。少し立ち止まって考えてほしい。革新的な技術、大いに結構である。魔学によりどんどんと身近になっていく魔法、それもまた大いに結構である。しかし、何か忘れてはいないか? 革新の裏に、よく付き物となるのは何であろうか?

 

それは既得権益に対する侵略、そして魔法から特別性を失わせる事による信仰のすり替えと、それによる文化の消失と人々の意識の変化である。

 

一部の貴族のみが使える魔法、それが魔道具により当たり前となる事で寧ろ魔法使いの方が異端となるかもしれない。挙句の果てに精霊信仰すらも失われてしまうかもしれない。

 

貴族こそが特別、それを簡単に壊す事。今までのアニスフィアとユフィリアであれば、何だかんだと後先考えずにやっていたかもしれない侵略と破壊。しかし、今はそれは簡単にできる事ではない。ユフィリアは人の上に立つ立場であり、アニスフィアは新たなる時代を導く者だから。

 

 だからこそ、何も考えずに行うのではなく。色々考えすり合わせたりしながら少しずつ。新たな問題へと手を取り合い立ち向かう二人。

 

「レイニ。―――私にしませんか?」

 

その裏、芽生える恋がある。二人の傍で咲く一輪の白百合の花がある。

 

「アニス―――私は、貴方に誉れを預ける人でいられていますか?」

 

「誉れだけなんかじゃ全然足りない。もっと色んなものを捧げたっていい。全部、ユフィと一緒がいいんだ」

 

だが、それに負ける二人ではない。新たな一面を出していくユフィリアに押され導かれるかのように、二人の間の白百合の花はもっともっとと、大輪の花を咲かせていく。

 

蛇足なんかと思うなかれ、新たな始まりを告げる今巻。

 

シリーズファンの皆様は是非。今巻もやはり最高である。

 

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