読書感想:JDとプロフェッサーの黄昏戦記 I

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。皆様はガンダムシリーズに登場した兵器であるMD、正式名称モビルドールというものをご存じであろうか。一言で言ってしまえば無人兵器であるが、現実の戦場でも今、ドローンのような無人兵器が幅を利かせている。そのような情勢の推移は果たして望ましい事なのか、それとも望んではいけない事なのか。それはともかく、アンドロイドもまた、兵器として扱えば無人兵器になるであろう。

 

 

何が言いたいのかと言うと、この作品はつまりはアンドロイドの少女達が戦場に踊る作品だと言う事である。

 

政府組織と反政府組織がぶつかり合う、砂漠の熱気漂うとある国。かの国で敵も味方も主力兵器として用いる兵器、その名もJD、正式名称judgement doll。本来ならば人間の介護、疑似パートナーとなるべきその機械達の中、「humanfaker」と呼ばれる人間を精巧に模した機械達。その機械達はライリスと呼ばれるクラウド型統合知能にパーソナリティを保存し、いくらでも復活できる兵器として戦い続けていた。

 

「人間である俺が可能な限りお前達の面倒を見るつもりでいる」

 

 その戦争の中、政府側の一員として整備士として参加する少年、時矢。彼は日々JD達の整備をしながら戦争に関わっていた。

 

彼にとってとある因縁のある人間らし過ぎるJD、アイリス。戦闘から料理まで万能なJD、ペルフェクシオン(表紙)。元気なサン、少しだけ大人びた古株のバル、優しすぎる狙撃手のカロンの通称「三馬鹿」。日々修理に励み、時にバル達の悪戯に悩まされたりしながらも。この戦争はいつか終わると思っていた。

 

 だがしかし、戦況は唐突に覆される。夜中に巻き起こる反政府側の大攻勢。突然の襲撃に見舞われた基地は幾度となく防衛線を突破され。最後にはライリスを破壊され、ひょんな事から事前にパーソナリティを自身のボディに移していたペルフェクシオン達だけが生き延びる。

 

『ああ、その件については解決済みさ』

 

ライリスの破壊によりJD達のパーソナリティは死んでしまい、しかしそれを悼む間もなく。軍の上層部に食い込む異邦人の将校、グリージョにより時矢を指揮官とした敵前線基地の奪取作戦が発令される。

 

その理由とは、敵の中にネイティブと呼ばれる正規の倫理観を持たず制御できない代わりに強力な兵器を使えるJDの存在が予想されているから。自分に任せられるのか、そう問いかけてもペルフェクシオンやバル達は賛同を示し。留守番させようとしたアイリスから反対を食らい、やむを得ずアイリスに隠された秘密を話し。改めて一丸となり作戦へと向かう。

 

『今の俺には―――失いたくない存在が、たくさんいるんだ』

 

戦いの先に見つけたいものを語り合い、失いたくないと願いを新たにし。立ち塞がる最強の敵、ネイティブであるジャスパーを打倒する為に時矢は作戦を打ちだす。JDの頭では考えられない、理解できない、「人間」だからこその作戦を。

 

その作戦の先、戦場は確かに動き。何かが確かに変わりだすのである。

 

ロボット好きな皆様にはお勧めしたい、勢いのあるバトルのあるこの作品。ロボ好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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