読書感想:八城くんのおひとり様講座 After

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:八城くんのおひとり様講座 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で舞台をひっくり返す程の衝撃を見せつけ、そのままに作品の舞台を〆て見せた今作品が、一年の時を超え続刊が発売されたのである。と言う訳でここからは前巻のネタバレに配慮せずに今巻の感想を書いていきたい次第であるが、前巻を読まれた読者様は、主人公である八城君には意外な所にガールフレンドがいた、というのはもうご存じであろう。

 

 

その名は「ヌエ」ことつぐみ(表紙)。前巻からずっと、気付かれぬばかりで側に居た八城君の彼女。彼と趣味を同じくし、よく似ている立ち位置にいる彼女とのラブコメであるのだ、今作品は。

 

では今巻では一体、何を描くのか。それは題名にもある通りAfter、その後の物語。前巻の一連の流れを通じて、友達同士として少しだけ距離が近くなったリア充グループとの一幕である。

 

「わかってるって。二人は別行動したいっていうんだろ?」

 

「でも、私は寅野さんとも仲良くしたいと思ってるんだ」

 

学校行事である古都鎌倉への校外学習。ヌエとの時間も欲しいしどうしたものか、と悩む八城君へとリア充グループのリーダーである幸斗は自分達のグループへ二人纏めて誘いをかけ、アリバイ作りのルートも示しつつ納得を受け、彼等と二人は共に向かう事となる。

 

 古都鎌倉、最初の目的地で写真を撮った後は首尾よくグループを解散し。八城君とヌエは、それぞれ一人の時間を満喫すべく歩き出し、二人の時間も満喫すべく動き出す。そんな彼等に触発されるように、ひとりで過ごす術を習った華音と智風もまた、一人で過ごす時間を作り。鎌倉を舞台に離ればなれとなった彼等は、広いようで狭い街の中で時に出会い繋がり、意外な組み合わせを時に産んでいく。

 

ある時は意外な女子同士の繋がりであったり、またある時は男子同士のまだぎこちない関係性であったり。

 

何気ない時間を通じ、何気ない、けれどかけがえのない時間の中で。八城君とヌエは自分達のペースで、好きなように。二人だけのかけがえのない関係性を築いていく。

 

 

「これから先にどんな笑いや涙があったとしても、最終的にはここに落ち着くって感じがしてさ」

 

 だからこそ、その光景はいつか必然となるのであろう。いつかの未来、猫と坂の町で家族となって、彼等とも付き合いの続く穏やかな日々が。恋人同士ても無理にべたべたしない、彼等だからこその幸せな日々は。

 

作者様の自由な感性で禁じ手に挑まれた事で、多角的な面白さのある今巻。来月の新シリーズ発売前に皆様も是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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