読書感想:負けヒロインが多すぎる!4

 

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読書感想:負けヒロインが多すぎる!3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、杏菜に檸檬、そして知花。主人公である和彦の前には三人の負けヒロインが揃った訳であるが、よく考えてみると前巻までが長めのプロローグであるのなら、今巻からがようやく彼等の物語の本当の始まり、と言えるのではないか。では今巻から描いていくのは何か。それは前巻、初めて自分から動いた和彦の成長、そして走り出すなり混沌としていくラブコメで青春群像劇である。

 

 

ツワブキ祭も終わり、世の中は聖夜に向かうばかり。ではこのまま平和に流れていくのか、と思いきやどうもそんな事もないらしい。突如生徒会副会長である天愛星により実施された持ち物検査で、文芸部OGである古都が捕まってしまったのである。

 

「大丈夫じゃないわ。それより聞いて、大変なことになったの」

 

 一体何を咎められたのか。それは受験勉強のストレスから作り上げたBL小説本。しかも和彦×ひばり(男体化)という思わず何作ってるんだとツッコミたくなる、ナマモノ同人誌だったのである。

 

職員会議にかけるという天愛星を止められず、和彦と文芸部の名前が出されているから逃げられもせず。容赦なく巻き込まれ、杏菜と和彦は共同で何とか取り戻そうと隙を伺う中。ひょんな事から和彦は、天愛星の成績が生徒会としては低めという秘密を知ってしまい。その秘密を守る事と、同人誌を引き換えに半ば脅迫されるような形で彼女から条件を突き付けられる。

 

それはあと八日以内、終業式までに生徒会書記である夢子と古都の仲に決着をつけるというもの。かつて生徒会役員だった古都の亡霊に縛られる先輩たちを解放するために、という名目の元、気が付けば和彦は事態の中心、濁流に巻き込まれていく。

 

更には同時進行で天愛星に勉強を教える事となり、だがそこに知花や檸檬のお節介が絡み事態は複雑な方向へ駆け出していく。その中で、彼は目撃していく。今まで掴めなかった古都の内面を。仲たがいしている、その根底で思っている事を知る為に。元部長である慎太郎の協力を仰ぎ、それぞれ夢子と古都をデートに誘いだすと言う形で、半ば強制的に向かい合わせ。二人の思いをすり合わせる機会を作っていく。

 

聖夜に何をやっているのか、と思わなくもないかもしれない。だがこれも彼等の青春なのである。そして事態の中心で流れの濁流にのみ込まれる中、和彦という存在はさらに磨かれ、新たなヒロインとの繋がりが出来ていく。

 

「温水君、抜け駆けは禁止だからね?」

 

それを見、杏菜の口からふと漏れた言葉。彼女の問いかけに和彦がついた小さな嘘。果たしてそれは何を招くのか、これから。

 

人間関係が更に混沌とする中、少しずつ彼等の物語が動き出す今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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