読書感想:恋人以上のことを、彼女じゃない君と。3

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:恋人以上のことを、彼女じゃない君と。2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、社会に出て擦り切れてから再会した元恋人同士、という糸と冬の関係はこの作品を読まれている読者様であればご存じであろう。元恋人同士、と言う事は元々は恋人であった、という事もご存じであろう。そんな時、何があったのか。まだまだ子供であった彼等に何があったのか。出会い惹かれて付き合って、別れて。そんな時期の事を描いていくのが今巻なのである。

 

 

 

「結局今年も、都内どころか品川区からも出ない年末年始になりそうだ」

 

 

迫る年末年始、社会人であられる読者様であれば大体お分かりであろう。師走と言う言葉の通り、大体休みの為には背中に銃を突き付けられる勢いで忙しい、という事を。糸と冬にとっても、それは例外ではなく。 しかし糸は転職を機に勘当同然の扱いを受けており、冬の方も父親の葬式まで故郷にログインしてやる気はなし。 まるで糸が切れた凧のように寄る辺なく、しかし自由に。何気ない年末年始をフェアリーテイルをして過ごす中。ふとぼんやりと、大学時代の事を思い返していく。

 

「皆瀬、付き合おうよ」

 

あの時、まだ彼女の髪は今より少し長かった。 どうすれば近づけるのかと悩んで、お互い毒親を持つと言う共通点を知り仲良くなって。勇気を出して告白し、付き合いだして。そこにあったのは、大学生な恋人同士として当たり前の時間。ゲーセンに行ったり、放課後にアジフライを食べに行ったり、二人で色々な所に出かけたり。確かにそこに在ったのである、幸せな時間は。 きちんと段階を踏んで深めていく、そんな優しい時間は確かにあった。

 

「三年足らずかな。あっという間だったね」

 

しかし、二人の関係は終わってしまった。その理由とは何処にあったのか。それは、糸の父親が原因。2人の交際を知り表では認めながらも、裏では糸への束縛を強め。その束縛に疲弊する彼女に気付けず、拗れてしまったのが原因だったのだ。

 

それもまぁ仕方のない事かもしれない。 未来を無邪気に信じることが出来ていても、それは子供ゆえの純粋さ。大人の世界を知らぬからこそ、まだ汚れる前だからこそ。 だからこそ、一度擦り切れて折れてしまえばあっという間だったのだ。

 

だけど今は違う、お互いに社会を知った、そしてお互いに、身寄りは最早ないようなもの。だからこそ冬は勇気を出して望む。 もう一度、その関係を。

 

擦り切れて汚れた先、その提案は何を生むのだろうか。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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