読書感想:いたずらな君にマスク越しでも恋を撃ち抜かれた2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:いたずらな君にマスク越しでも恋を撃ち抜かれた - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻が発売されたのはおよそ六カ月前であり、あの時節はまだまだコロナウイルスが流行し猛威を振るっていた頃であるが、今この感想を書いている段階では、コロナウイルスも少しではあるが小康状態と言ってもいいのかもしれぬ状況へと推移している。日々のニュースのトップがコロナウイルスである事も少なくなり、それは喜ばしい事である。ではこの作品における謎のウイルスの現状はどうなっているのか。そして真守と紗綾という、ある意味ウイルスがキューピッドになったような二人の恋路はどんな方向へと進んでいるのだろうか。

 

 

「あれあれ、私たちの関係は『普通』なのかにゃ~?」

 

学校の封鎖期間も終わり、後は文化祭本番を無事に迎えるだけ。今年はたこ焼きではなく、特別なお守りで。形を変えても浮かれは変わらぬ中、日々紗綾からの蜜なからかいは濃度を増し。マスク越しのキスを交わしたとはいえ、まだまだ根っこは変わらぬ真守の心は相も変わらず揺らされる。

 

「朝山君、私の『初めて』を奪ってください」

 

 が、しかし。そんな二人の関係を揺らそうと衝撃的な提案を持ち掛けてくる少女が一人。先生と生徒、そして母親の初恋の相手という二重で禁断の恋を燃やす璃子(表紙)である。そして二人の関係に波紋を投げかけるのは彼女だけではない。紗綾の幼馴染であり長年彼女の事を思ってきた少年、勝矢もまた最後の機会をものにせんと真守をブロックしながらも紗綾に迫る。

 

「恋ってね、本当にタイミングなんです―――」

 

紗綾がいるけど、璃子を無下にする事も出来ず。ヘタレで奥手な優柔不断が災いし、それが結果的に紗綾を傷つけてしまう事になり。本番が迫り、容赦なく始まる中、勝矢が全て掻っ攫うとばかりに勝負をかける。

 

 タイミングはもう逃してしまったのか? 尻込みしていていいのか? 否、それは彼女の誠意に対しての不義理にしかならぬ。大切なのは答えること、届ける事。波乱ばかりの事態の先、忘れたお守りの代わりに自分だけの伝える形を手に、真守は紗綾の元に駆けていく。

 

「―――今度こそ、望むところです」

 

すれ違いを超え、臆病だって踏み倒し。一世一代の告白、捧げられるのは失恋ではなく通じ合う思い。震える振動に恋を乗せ、ようやく二人の心は本当の意味で結ばれる。

 

「未来の先生の隣、予約しちゃいます!」

 

その裏、璃子と謙吾の恋もまた、一つの形を迎えていく。謙吾の努力により実現したサプライズ、恋人達を祝う空の華の下、諦めようとした恋心が燃え上がる。絶対に隣に、その時に。もう諦めないと、それが正解でなくとも、と。母親の生き写しの顔で、だが彼女が絶対に宿さぬ眼の光と共に。璃子は力強く宣言してみせる。

 

恋心が幾重にも交わり、互いに振れて揺れて。その先にそれぞれの形を見出していく今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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