読書感想:俺にトラウマを与えた女子達がチラチラ見てくるけど、残念ですが手遅れです 3

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:俺にトラウマを与えた女子達がチラチラ見てくるけど、残念ですが手遅れです2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻でようやく雪兎を取り巻く状況はフラット、ゼロの地平に持ち込まれた事で、ラブコメと言う意味でも本当に始まる事となった訳であるが。前巻までを読まれた読者様であれば、未だ一人リスタートしていない人物がいるのもご存じであろう。そう、姉である悠璃である。彼に対する負い目と愛を同時に抱え、矛盾する感情を抱え込み。彼女は未だ、歩き出せていないのである。

 

 

そんな彼女の再始動を描いていくのが今巻であり、同時に今までの波乱が少しだけ手を緩めて日常が緩く繰り広げられるのが今巻なのである。

 

「先生、多分無理です」

 

バスケの特訓として仮面を被ってストバスで道場破りを仲間達と共に繰り返していたら、いつの間にか謎のバニーマンとして有名になっていたり。またある時は、汐里が勇気を出して魚を見たいと誘ったら、何を勘違いしたのか知り合いに頼んで漁船を出してもらったり。好意には気づけど、やはり天然で頓珍漢なのは変わらない。けれどそんな日々も、周囲と越えられぬ崖を築いて引きこもっていた時とは違い、愛おしい物。

 

 

「・・・・・・あの子はもう大丈夫」

 

そんな彼を見つめ、悠璃の中には彼に対する安心と、自分のやっている過干渉への自覚が浮かび上がり。それを自覚し、もう大丈夫だからこそ距離を取ろうと、彼女は動き出す。

 

「やり直そうよ最初から。母さんだってママから出直してるんだから。俺達だって」

 

だけど肝心な事を忘れてはいけない。それは悠璃の勝手な望みであって、雪兎の望みではないと言う事。自分の思いを誰かが勝手に決める、そんな事はあってはいけない。

 

だからこそ、やり直すことを求める。お互いのすれ違いを解消し、もう一度やり直すために。許されぬ思いを抱えていても、それでいいと。許して彼女もまた一歩、歩き出す。

 

その彼女達の先を行くかのように、夏休みを迎えた時間の中で少女達もそれぞれ動き出す。

 

部活で汗を流したり、皆で海に行ったり、ナイトプールに行ったり。またある時は近親者たちと何故か脱衣麻雀を繰り広げたり。賑やかな日々の中、彼の心をつかむために。少女達はまた改めて決意を固めていく。

 

だけどやはり、雪兎の不運はとんでもない方向のものを引き寄せてくる。母親である桜花を訪ねてきた謎の男、彼が告げたのは雪兎にとって衝撃の事実。どう見ても爆弾であるそれはどんな波乱を巻き起こすのか。

 

波乱も一休みの中、それぞれの思いが動き出す今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。