読書感想:ラブコメ・イン・ザ・ダーク

 

 さて、寝てる間に見る「夢」というものはその内容によって何かを暗示していると言われる事もあり、夢占いなんてものもある。そして迷信ものであるが、望んだ夢を見る方法もいくつかあるらしい。ではもし、そんな「夢」の世界を自分の自由にできるとしたら皆様はどうされるであろうか。現実はあれだから、せめて夢の中くらいは。そこでどんな世界を創られるであろうか。

 

 

口うるさい母親に辟易し、学校ではヤンキーにパシリに利用され。そんな生きるのも面倒な世界に生き、そんな世界に不満を感じている少年、ジロー。しかし、彼にいつの間にか宿っていたのは「夢を自由に操る力」。その力で学校のムカつく奴を夢の中で下僕に変え宴を尽くし。荒唐無稽な夢を作り上げ、日々彼は夢の中で自由を謳歌していた。

 

「そいつはいただけないね」

 

 だがしかし、そんな世界に呼んでもいない闖入者が一人。ペスト医者の格好をしながら夢の世界の中で彼の夢を唐突に終わらせ。謎の人物に殺されること幾度目か。殺されるたびに力をつけ、ジローは逆に謎の人物を抑え込み。謎の人物は対話を選ぶ。

 

世界の医者であると名乗るその人物は、ジローは世界にとって危険な病気であると告げる。夢の世界は現実と繋がっている、そしてもう既にジローの力によって人知れず影響は起きている。この事態が続く事、それ即ち世界の危機であると。

 

「君、恋人が欲しくはないか?」

 

その説明にジローは悦び世界の敵となることを決め。そんな彼へ、謎の人物は夢の世界から手を引くのなら恋人を提供すると提案し、その説明通りに謎の人物の中身である美少女、ユミリ(表紙)がジローの元に現れ、一方的に恋人宣言をしてくる。

 

 唐突に始まるラブコメ、平凡な恋人らしい事を模索したりぶつかり合ったり。その最中、ジローはユミリに連れられ一晩のうちに世界を周り、彼女が問題を解決する姿を見届け。そんな彼女に協力を願われ。提案されたのは、美海を疑うような提案で。

 

それは一方的に敵意を募らせ夢の中で好きに扱っている女子四人を口説き落とす事。それもユミリの力を借りず、自分一人で、全ての力を賭して、というもの。

 

最初の標的となったのは、時代錯誤のヤンキーであり彼をパシリとして扱う少女、トオル。一方的に言う事を聞くのではなく、関りを変える事から始め。ユミリの予想外の方向へと踏み出しながら、少しずつ向き合っていく。

 

 初めて知る、彼女が何を思っていたのか。彼女の本当の素顔、隠していた思いを知っていく。だがその思いはジローに力により変質し、夢と現の狭間で騒動を巻き起こす。

 

「なあユミリ。僕って何なんだ?」

 

騒動の解決を齎すのは化物の力。だがその力を信用できず、ユミリに問いかけれど答えは見えず。だが彼はまだ何も知らぬ。何に巻き込まれているのかも、本当の世界の危機も。

 

この作品、何と呼べばよいのだろう? 「ラブコメ」である、しかし「暗黒」である。そしてセカイ系とも言える。正に複雑怪奇、言葉にしにくい。だからこそ画面の前の読者の皆様も是非、この作品を感じてみてほしい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

ラブコメ・イン・ザ・ダーク (MF文庫J) | 鈴木 大輔, tatsuki |本 | 通販 | Amazon