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読書感想:クラスのギャルが、なぜか俺の義妹と仲良くなった。 「今日もキミの家、行っていい?」 - 読樹庵 (hatenablog.com)
合鍵を渡したらもう「恋人」じゃなくて「家族」なんだよ。前巻を読まれてそうツッコミたくなった読者様はどれだけおられるであろうか。安心していただきたい、私もその一人である。恋人を一足飛びで飛び越え、独特の距離感ながらもそこらの恋人同士を飛び越え親密な関係性となりつつある、主人公とヒロインである慎治と結愛。しかしやっぱり、この二人は未だ付き合っていないのである。
もどかしい、じれったい。男ならガツンと、勇気を出して、そう発破をかけたい読者様もおられるであろう。しかし、その思いは一旦、脇に置いておいていただきたい。慎治の心の奥底、未だ刻まれたトラウマの溝は深い故に。そう簡単には越えられぬし埋められぬ。だからこそ、一歩ずつ。少しずつでも。
そう慎治の心に手を伸ばす結愛が彼の心の扉の鍵を手に入れるまで、あと如何程か。それは未だ分からぬけれど。確かに少しずつ、その扉が開く予感は膨らんでいる。そして、彼の周りの者達も時に見守り、時に発破をかけてくるのである。
義妹である紡希は無邪気に裏もなく背を押し。慎治を同好の士であると誤解する桜咲は未だ認めぬとは言いながらも、早く一人前になれとでも言わんばかりに何処か荒っぽくも背を叩く。
「おめぇも迷ったら、まず動け。それが大事なモンのためなら、なおさらだ」
更には海外遠征に行く父親からも、そう諭され。心に浮かんだ顔は何故か紡希の顔よりも先に結愛で。
期末試験に向けて、学力がピンチな結愛の為に彼女の家で泊まり込みで勉強を教えたり。告白された彼女を目撃し始まったアクシデントで負傷し、結愛に学校でも密着される事になり、あらぬ噂が立つ。そんなときに彼はどうしたか。今までならば関わらなかったかもしれない。しかし、今は違う。結愛の名誉を守る為、父親のように敢えて「悪役」の仮面をかぶり、周囲を欺こうと挑んでいく。
「・・・・・・あの時は、結愛のことを考えてたかな」
その一歩は未だ小さいけれど、幼いけれど。それでもそれは、彼が一瞬だけでもトラウマを乗り越えた証。彼女の事を純粋に思うからこそ踏み出せた、小さいけれど大きな一歩。
まるで外国のホームドラマのようにくすりと笑えて温かく、その中でラブコメの予感がどんどんと高まっていく今巻。
前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
クラスのギャルが、なぜか俺の義妹と仲良くなった。2 「おかえり、キミを待ってたよ」 (ファンタジア文庫) | 佐波 彗, 小森 くづゆ |本 | 通販 | Amazon