読書感想:じつは義妹でした。5 ~最近できた義理の弟の距離感がやたら近いわけ~

 

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読書感想:じつは義妹でした。4 ~最近できた義理の弟の距離感がやたら近いわけ~ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、演劇部に入る事になり、共に芸能界という道の世界に飛び込む事ともなり。光惺とひなたという兄妹の過去から始まった因縁に涼太と晶は巻き込まれ突き進んできたわけであるが。どうもその縁が、新たな縁を繋いで来るらしい。兄弟姉妹、という色々思う所を抱えているかもしれない関係のお悩みが、新たに彼等の元へ持ち込まれるのが今巻なのである。

 

 

「先輩、プールに行きますよ!」

 

演劇部、しかし中々演劇にならず。その原因の最たるものである部長の西山。憎めないキャラだけどいつも良いも悪いも色々持ち込んでくる彼女の、唐突な一言。結局巻き込まれるしかなく、涼太と晶は演劇部の部員たちとスパ施設に行く事となる。

 

「それよりも珍しいものが見れて良かった」

 

まずは水着選び、という事で晶とひなたに連れ出されたショッピングモール。その途中で出会ったのは、特に深い交流があるわけではない級友の結菜の意外な一面。多くの弟妹を抱えて元気な妹達に苦労させられている、姉としての素顔。

 

無事に室内プールでの賑やかな遊びも終わり、だけどその後に今回のお悩みがやってくる。それは結菜の事情。親代わりと言わんばかりに家事も勉強もバイトも頑張り、変わろうと藻掻いている彼女のお悩み。

 

それは妹、ではなく弟の夏樹が反抗期であるという事。受験生であり大切な時期であるのに、まだ進路を決めておらず親と激突している彼。けれど彼の内心は、結菜にも見えてこない。

 

ではそれを何とかするのは誰なのか、やはりそれは涼太の役割であろう。何故か兄役を務める事となり、晶もノリノリで協力し。程なくして夏樹の心をつかみ、慕われるようになる中で。彼が抱えている思いが見えてくる。

 

その思いとは、涼太もかつて体験したもの。家族の為に、と己の夢を押し殺す。それはある意味で正しい事なのかもしれない。だけど子供、という観点から言えばきっとそれは間違いだ。子供は高らかに夢を叫んで良いのだから。

 

必要なのは向き合う事、では向き合わせる為にはどうすればいいのか。簡単な事だ、ぶつかり合えばいい。かなり絶対的な差があっても、負けられない戦いがここにある。圧倒的な力を持つ夏樹の土俵にあえて乗り、晶が格好いい所を見せ、涼太がボロボロになりながらも「兄」としての意地を見せる。

 

「支えても、寄りかかっても・・・・・・ちゃんとお互いに想い合っていたら、どっちもいいなって最近思うよ」

 

一人じゃ夢は叶わない、でも夢を見ていい、我が儘だっていっていい。きちんと許してくれる家族がいるから。仲立ちとなって姉弟を向き合わせ、事態を解決に持っていく。

 

だけどそれは、更なる大きな問題の呼び水に過ぎなかった。一連の奔走の裏、ある接触を切っ掛けに何かを考えていた光惺が動き出す。その先にはひなたの涙しかないのに。

 

次巻、いよいよあの兄妹。果たしてどうなってしまうのか。

 

じつは義妹でした。5 ~最近できた義理の弟の距離感がやたら近いわけ~ (ファンタジア文庫) | 白井 ムク, 千種 みのり |本 | 通販 | Amazon