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読書感想:両親の借金を肩代わりしてもらう条件は日本一可愛い女子高生と一緒に暮らすことでした。3 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、艱難辛苦を乗り越えここまで無事、まるで夫婦のように付き合い、周りから「メオトップル」とまで呼ばれる勇也と楓であるが、画面の前の読者の皆様はかの二人を見て、何か思われることは無いだろうか。
「好き」と言っていても、いつも「愛している」と囁いていても。それはまだ、子供の言葉。思えばここまで来たけれど、二人の始まりは普通の恋人同士としては中々にありえにくいシチュエーションであり。そう考えると、この二人の関係は何処か歪なままに噛み合ってしまっているように見えてこないだろうか。 そんな二人が、「愛している」とお互いに囁いていても。それはまだ、「愛」というものを分かっていないという事になるのかもしれない。
「恋」を転じて「愛」へと発展させるのならば。ずっと一緒に、という約束を本当にするのならば。「大人」になる、それは必要な事。では「大人」になるとはどういう事か。その一端が示されるのが今巻である。
前巻の告白の続き、哀の気持ちには応えられぬと勇也は正式に答えを出し。傷つけても尚、これまでの友情は変わらずに、と皆で花火を見上げ。そんな勇也の複雑な内心を察した楓はこれまで通り寄り添う。
「ところでみんなはさ、将来について何か考えていたりする?」
そんな中、皆でカフェに集まり夏休みの宿題を片付けた帰り際。秋穂の唐突な質問が、楓の心に波紋を投げかける。
哀も秋穂も勇也も。皆が皆、それぞれ将来の夢を持っている。将来のビジョンを明確に持っている。翻って自分はどうか。勇也と結婚したいと言う夢はある。だけどそれ以外が無い。それ以外の、将来の夢と言うものが何処にもない。
初めて気づく、自分がまだ、何処か空っぽであったという事。そんな事を自覚した楓はさっそく行動を開始し。一週間だけの短期バイトで初めて社会経験を積んだり、偶々日本に帰ってきていた勇也の知り合い、貴音に話を聞いたりと様々な経験を積み、未来を本格的に見つめていく。
文化祭が迫り、メイド喫茶をクラスで行う事になり、皆で準備に励んだり。文化祭本番、それぞれの想いが巡るそれぞれの時間が巡る中、楓はどんどんと目覚めていく。本格的に未来を見つめ、自分が何をしたいのかを見つめていく。
「大事なお話があるんですけど・・・・・・聞いてくれますか?」
勇也を公私共に支えるパートナーであるために。だが、楓が見つけ出したその選択肢は勇也の目から光を奪う程の、衝撃的な選択肢。
そんな反応になってしまうのも、それは勇也の未熟の証。楓が一足先に大人への成長の扉を開いたのなら。きっと今度は、勇也の番の筈である。
物語が本格的に、歯車が一気に進み始める今巻。
シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
両親の借金を肩代わりしてもらう条件は日本一可愛い女子高生と一緒に暮らすことでした。4 (ファンタジア文庫) | 雨音 恵, kakao |本 | 通販 | Amazon