読書感想:パパ活JKの弱みを握ったので、犬の散歩をお願いしてみた。2

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前巻感想はこちら↓

読書感想:パパ活JKの弱みを握ったので、犬の散歩をお願いしてみた。 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、一匹を交え形成された名前は未だ、明確な名前は無いこの関係であるが、この作品には乃亜の物語が始まる前から始まっている物語がある、というのは画面の前の読者の皆様も何となくお気づきではないだろうか。乃亜自身の物語は前巻で始まった。では一体、始まる前から始まっていた物語とは何か。

 

 

それは日菜子の物語である。了の後輩であり、彼に懸想する相手であり、乃亜の恋敵である。

 

 しかし、日菜子にはまだ語られていない物語がある。それが語られる事になるのが、今巻なのである。

 

世間は高校生にとっては夏休み、大人にとってはいつも通り変わらぬ仕事な日々。夏休みの宿題に乃亜がきりきり舞いさせられたりしながら、いつも通りタクトに癒されたり。偶にはえっちな本を了の部屋で探してみたり。了がお得意さまから貰った大型温泉テーマパークに皆で行ったりと。いつも通りのドタバタの日々を、かけがえのない時間を過ごしていく乃亜達。

 

 そんな中、日菜子のかつての同級生との不意の再会から、日菜子が捨てた筈の過去は明らかとなる。かつて髪を真っ赤に染め不良みたいに振る舞い、絵と言う大好きな事を得たけれど、世間の評価の中で唯一性を削ぎ落され、いつの間にか情熱を失ってしまっていたと言う事。

 

それは決してシンデレラストーリーなどではなく。どこにでもある挫折の物語。主人公になり切れず、主人公になる素質をもてず。結果的に何者にもなれなかった人間の物語である。

 

「そっか、じゃあ―――がんばって変われたんだね」

 

「それでもデザイナーって仕事を選んだのは、やっぱり美術が好きだからでしょ?」

 

けれど、そんな彼女を了だけは認めてくれた。世界には自分一人ではないと教えてくれた、だから好きになった。

 

「恋くらい、自由にさせてくださいよッ!」

 

だから、この恋は誰が相手であっても譲れない。例えお節介な先輩が手を貸してくれようとしていても、それで勝利する可能性が高くなるとしても。この想いは自由でありたい、彼を想う事を自由でありたい。故にこそ、その手を跳ね除け、己の全力で、只一人で挑んでいく。

 

 そこにあるのは、まごう事無き「恋」の感情。そこに大人も子供も関係ない。あるのは誰かに向けた真っ直ぐな思いだけ。その思いを通じて分かり合えた人がいる、向き合えた人がいる。だからこそ、今は全部楽しむ。いつか傷つく日が来るとしても、今だけは全力で向き合う。

 

更にドタバタに、賑やかに。そんな中に甘くて温かな恋が膨らむ今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

パパ活JKの弱みを握ったので、犬の散歩をお願いしてみた。 (2) (ガガガ文庫 も 4-2) | 持崎 湯葉, れい亜 |本 | 通販 | Amazon