さて、古来より女の子が自分だけに見せてくれる顔と言うものは尊い、だからこそ恋に落ちるとアカシックレコードにも記されているらしい。というのは冗談であるが、憧れられる対象である少女と、二人だけのアオハルを過ごすと言う展開はラブコメとしては王道の展開である、というのは画面の前の読者の皆様の中でラブコメを嗜まれている読者様であれば、ご存じではないだろうか。
何故こんな前振りになっているのか、というとこの作品の帯を見ていただければもうお分かりであろう。この作品が、アオハルの物語だからである。
そしてこのアオハルは、徹頭徹尾余計な要素となり得る因子が排除されており、主人公とヒロインの心温まるやり取りに一極集中しているのである。
「あたしには・・・・・・友達がいませんっ!」
「がんばれ、桃猫様っ!」
春、新しい季節が始まる時節。名門高校の入学式、その新入生代表の挨拶で衝撃的な挨拶をかました、大銀行の令嬢、桃猫ハル(表紙)。 いっぱいいっぱいだったからかとんでもない挨拶をかましてしまった彼女に、勇気を振り絞って声援を送ったのは、一人暮らしの隣人である少年、カナト。
「あたしとあなたは仲間だから」
そんな何気ない繋がりの二人は、入学式の日の夜、カフェの席で言葉を交わし。他人から嫌われたくないという共通点を持つ同士として意気投合し。カナトはハルの「人前で笑えない」という悩みを共有することになる。
何故笑えぬのか、それは彼女にとっては告白のようなものだから。そして嫌われるのが怖いから。
悩みを共有したからには放っておくことは出来ず。何処か不器用に寄り添う事を決めたカナト。そんな二人は、二人だけの時間を少しずつ積み重ねていく中。少しずつ、カナトにだけ。ハルは不器用な笑みを見せるようになっていく。
初めて一緒に帰宅したり。初めて二人でカラオケに行ったり。カナトに背を押されハルが級友達に自身の思いを告白したり。パジャマパーティでハルの心の弱さを目撃したり、二人で学食で巨大なパフェに挑んだり、更にはデートなんかしたりして。
「僕もがんばれば、誰かのためになれるって、ようやくわかったよ」
そんな日々の中、ハルが伝えてくるのは自分の思いとカナトへの感謝。カナトは忘れているけれど、過去に一度だけ会っている彼がくれた心の温かさ。その事実に気付き、思い出せたとき。彼女の愛と勇気が、カナトの心を覆っていた雨雲を吹き飛ばす。
「・・・・・・ハル? 明日も、笑わせる。一年中、この先、未来ずっと」
「君の、特別なパートナーとしてっ!」
そして彼は今一度、改めて決意する。自分の憧れへと手が届いていた事を教えてくれた彼女の力になる事を。これから先、ずっとと約束する事を。
打って響き重なり合う。共に鳴って響き合う。まるで惹かれ合うように出会い、連星となるかのように共に手を取り周り出す。
温かな世界に見守られ繰り広げられる王道のアオハル。それがまさにここにある。だからこそこの作品、ラブコメとして一つの極致である。
真っ直ぐなラブコメがキスな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。