読書感想:キミの青春、私のキスはいらないの?2

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前巻感想はこちら↓

読書感想:キミの青春、私のキスはいらないの? - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、アオハルと書いて青春と読み、青春と書いてアオハルと読む。と言うのはさておき、青春とは一つの形に限定されるものではない、というのは画面の前の読者の皆様もご存じであろう。青春という形に定まった最適解はなく、それぞれの中にのみ最適解は存在している。つまりは、青春の正解とは各々それぞれの中に存在しているのである。

 

 

その最適解を求める者達、それこそがこの作品の主人公である光太郎であり、前巻の騒動を経て、ようやく彼は青春の入り口に立ったと言える。今まで無駄だと思ってきたものが無駄ではないと気付けたからこそ、彼の青春はここからである。

 

「確かに、キスが何かを変えるかもしれない―――」

 

『ねえ、黒木は私とどうなりたいの?』

 

 変化したからこそ、分かってしまったからこそ気持ちが揺れる。小雪の言葉がどうにも気にかかる。何故彼女の事情がこうも気にかかる、自分がどうしたいかも分からぬのに。そんな揺れる日々の中、軽音部の級友である阿部から迫る学祭でのバンド演奏に参加を要請された事から、新たな青春の扉が開くのである。

 

阿部の元に集った、会った事もない者達とチームを組み、彼の輝きに魅せられるかのように練習に打ち込み。皆で同じ時間を共有し。

 

その途上、自分だけの相棒となるギターを探す中、小雪の過去の一端へと迫り、彼女の魂ともいえる相棒を借り受ける。

 

どんどんと進んでいく準備、確かに感じた手ごたえ。

 

 しかし、そんな中。阿部の突然の不祥事による停学と言う最悪の事故から最悪の事態は巻き起こされ、阿部の相棒は破壊され、彼の元に集ったバンドは崩壊を始めていく。

 

「阿部の曲は・・・・・・、誰かを変えられるんだ」

 

今までなら、ここで立ち止まっていたかもしれない。だが、もうそんな段階は終わった。溜息なんてもう一生分ついた、つき飽きた。客観的に視れば、こんなことは正しくないのかもしれない。だとしても、それでも。この熱は嘘なんかじゃない。

 

 胸に宿るは、証明したいと言う願い。阿部の願った世界の変革と言う願い。その願いを今、確かに受け継ぎ再び前へ走り出し。約束のステージ、光太郎達は喉よ枯れろと言わんばかりに声を上げ、本音と気持ちを歌詞に乗せ、世界へと叩きつけていく。

 

そこには確かに想いがあった、願いがあった。そして力があった。その力が今、小雪の胸へと届き。彼女の足を一歩、進ませる追い風となる。

 

 嗚呼、正に青春である。どこまでも青春である。青臭くて瑞々しくて、真っ直ぐに熱いアオハルである。前巻にも増してそんな輝きに溢れているからこそ、この作品は青春ものとして最高であると言いたい。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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