読書感想:僕たちはまだ恋を知らない ~初恋実験モジュールでの共同生活365日~

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 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。皆様の中でかつて、将来の夢として宇宙飛行士になってみたいと思われた読者様はおられるだろうか。宇宙に行ってみたい、それは人間が一度は抱く夢かもしれない。まだ見ぬ世界に憧れるのは当たり前かもしれない。だがしかし、今現在宇宙に行けるのは宇宙飛行士に限られ、宇宙飛行士になると言うのは狭き門なのである。

 

 

詳しくはそれぞれ調べていただきたいが、そもそもの募集要項自体がかなりの難関であり、候補生になれたとしても振り落とされるのが当たり前の厳しき試練が待ち受けているのだ。

 

 そんな試練の一つに、モジュールと言う限られた空間の中での共同生活と言うものがあるのはご存じであろうか。協調性等様々なものを問われる試練、それが題材となるのが本作品である。

 

宇宙開発が盛んとなった令和某年の近未来。かの未来、日本の片隅で一つの小さな箱庭が産声を上げる。その名は第18局地用居住モジュール。空の果ての星の開拓を見据え作られた、夭折の天才科学者が遺した箱庭。

 

 そんな箱庭に6人の学生を集め、一年間の共同生活を送らせるという実験計画が始動する。かの計画に補欠合格として組み込まれ、繰り上がりでメンバーとして選ばれたのがこの作品の主人公である光である。

 

母子家庭の育ちであり母親に楽をさせる為、反対を押し切り半ば飛び出すかのように参加し。モジュールに到着した彼を待っていたのは5人の少女。

 

唯我独尊、品行方正な乃亜(表紙)、フリーダムな沙良、料理上手な妹系メイドな千真、鎌倉武士系武道少女、藤子。よく眠る系の大人なお姉さん、ねる。

 

初日から沙良に振り回され、彼を警戒する乃亜に恋愛禁止というルールを押し付けられたかと思えば、共同生活でのリーダーに任命され。

 

 そんな彼等を待っているのは、限定された時間の中、限定された空間の中での共同生活。時にぶつかり合ったり秘密の趣味を目撃したり、幽霊騒動に巻き込まれたり。

 

「つらいときは言うんだぞ」

 

そんな日々の中、少女達の事を少しずつ知っていく。知って彼女達と近づいていく。その中で心が変わっていく。まだ何も、恋すらも知らぬ無垢な心が少しずつ変わっていく。

 

そんな「限定」、そして「変化」が見所であるこの作品。この作品は根底にリアルがある。だからこそ、そのリアルがあるからこそ。一寸先は闇の中、まだ見ぬ未来への密着感があるからこそ。この作品は面白いと言えるのだ。

 

少しずつ、丁寧に進むラブコメが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

そして、この作品が末永く続いてほしい限りである。

 

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