読書感想:魔導書工房の特注品 ~落ちこぼれ貴族の魔導書を作ろう~

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 さて、画面の前の読者の皆様に一つ、唐突に問いかけてみたい。皆様は魔導書と聞いてどんなものを思い浮かべられるであろう。魔法カードが思い浮かんだ貴方は恐らく決闘者であろう。そうではない読者の皆様にとって、魔導書とはどんなものであろうか。魔法と言う名の叡智を授けてくれる、本当の意味で魔法のような本の事を言うのであろうか。

 

 

ファンタジーであれば様々な場所で登場する事も多く、魔法が絡む物語であれば登場人物の強化のために必要となるかもしれない、魔導書というアイテム。ではこの作品において魔導書とは一体どんな扱われ方をしているのだろうか。

 

 それは魔力を通せば記された魔法が使えるというアイテムであり、今では大手の出版社のような工房が多くのシェアを持ち、廉価で創られる事が多いもの。だが、量産品、廉価版とは各々の個人に合わせたものではない。するとどうなるか。魔導書が合わず、様々な問題もあり魔法が使えぬ人だっている。

 

そんな人にこそ必要となるのが、その人に合わせて作られた特注品。そしてそんな魔導書を作るために開かれたのがペリアプト魔導書工房。異世界のとある魔法王国、その王都の片隅の人気パン屋の二回に開かれた工房である。

 

 その工房の主の名はティスカ(表紙)。魔法の才に優れる才媛であるも天才肌であるが故に常人とは中々に相容れず、学校を留年し就職浪人してしまったが故に、工房を立ち上げたパン屋の一人娘でもある少女である。

 

魔法も大好きだがパンも大好き。新しい魔法が記された魔導書が発売されたのなら、まずはその魔法を解き明かし、第一にパン作りに応用して見せる。

 

何処かぼんやりとしたティスカは、共に工房を立ち上げた仲間であり、かつて亡くした親友の妹であるエルネに呆れられたり、一方的に好敵手認定してきていた貴族令嬢、リセに怒られたり。時に、かつての工房を知る謎の長命種の少女、ツキに教えを請うたり。時にドタバタ、時にお仕事に真剣に。工房の主として、仕事をこなしていく。

 

 ここまで書いてきた中で画面の前の読者の皆様ももうお分かりではないだろうか。この作品は、ガールズファンタジーである。時に賑やかに駆け回り、時にほっこりとする日常を過ごしながら。依頼へ真剣に向かい合い、お仕事をしたりバトルしたりする物語なのである。

 

 

お仕事の中巡るはエルネの思い。死した姉へ向けた想いと、自身のせいでハンディキャップを背負わせてしまったティスカへの罪悪感。お仕事の中向き合い、姉の思いとティスカからの想いに向き合い。そして本当の意味で彼女の相棒となり。共に進み成長していく。

 

「うん、一緒に頑張ろうね!」

 

 その輪の中にリセも加わり、更に賑やかとなり。そんな彼女達のほのぼのとした日々が、心に賑やかな温かさを齎してくれるのが、この作品のいい所であると言えよう。

 

ほのぼのしたい読者様、可愛い女の子達がわちゃわちゃする様子を楽しみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

魔導書工房の特注品 ~落ちこぼれ貴族の魔導書を作ろう~ (ファンタジア文庫) | いつきみずほ, にもし |本 | 通販 | Amazon