読書感想:カルネアデス 1.天使警察エルと気弱な悪魔

 

 

 さて、凸凹と書いてでこぼこ、と読む訳であるが凸凹コンビと聞いて画面の前の読者の皆様が思いつくのはどのコンビであろうか。ぴったりと息が合っている、という訳ではなく所々息が合わず、時にぶつかり合ったり。それでも共に何かに立ち向かう中で、唯一無二のコンビになっていく。そんなコンビ、と聞いて画面の前の読者の皆様が連想されるのはどのコンビであろうか。

 

 

その答えはともかくとして、この作品もまた凸凹コンビのお話である。しかもそれは、天使と悪魔、正反対の種族の少女達によるコンビである。

 

人間、天使、悪魔、獣人、吸血鬼、五つの種族が存在し、天使と悪魔が敵対し、獣人を配下とし、吸血鬼と同盟を結んでいるとある世界。この世界の、人間の街に潜む悪魔の少女、その名をイヴ。悪魔のテリトリーを外れ単独行動している稀有な悪魔であり、何度かの逮捕と脱獄、そして常である逃げの速さから「逃げ羽根のイヴ」との異名を持つ少女。

 

「天使警察エリートのエル!」

 

 そんな彼女を逮捕しようとする、天使警察はしかし、怠惰と傲慢に満ちており。そんな警察内部でも珍しい、職務に忠実で勤勉な少女、エル(表紙)。イヴを追い詰めるも、彼女の隠し玉の召喚獣によって逃げられ。再びの遭遇は、いきなりの不穏に彩られる。場に居合わせた人間が、刻まれた呪いにより魔獣に変化し。更にそこへ襲来した多数の人間が魔獣に変化し。イヴの助力により、その場から逃走する事に成功し。一先ず天使警察本部でイヴを捕縛する形となる中。署長であるシャレーナの命により、何故かエルとイヴはコンビを組む事となる。

 

最近起きている連続殺人事件と、この襲撃には関係ありそう。懐くように距離を近づけてくるイヴにエルがうがー、となったり戦闘においては何だかんだと息が合った、お互いの短所を補う戦闘を繰り広げたり。

 

 

そんな中、捜査線上に現れていく関係者が口にするのは、世界の真実という言葉。シャレーナも何か知っている様子を見せる中、彼女達は捜査する以外に道はなく。しかし捜査の中でイヴが負傷し、治療の中で悪魔にはあり得ぬ反応を見せ。 その先に、唐突にシャレーナの命によりバディは解散となり。管轄から離れた事件を追い、イヴは一人捜査を続ける。

 

「命も魂も懸けられないで、なにがバディよ」

 

本来の任務に戻るエル、だけど心が叫ぶ。このままではいけぬ、終わりたくはないと。その心に従い、仲間に背を押され。同盟相手である高貴なる吸血鬼、ノアに貸しを押し付け己の命を人質にして。助力を得、イヴが乗り込んでいる遺跡へと乗り込んでいく。

 

 

「最強で、最高なの」

 

真の黒幕との戦いの中、明らかとなるのはイヴに隠された衝撃的な秘密。しかしそんな事は関係ないと。自分達は最強で最高だから、と。二人の絆で勝利を掴んでいく。

 

だけど、彼女達は未だ知らぬ。知らされた真実の一端、それ以上の何かがある事を。そしてその何かを操ろうとしている者がいる、という事も。

 

綾里けいし先生らしく、陰惨さと凄惨さがある中で彼女が彼女に出会い絆を繋ぐ、バディものの面白さがあるこの作品。バディものが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: カルネアデス 1.天使警察エルと気弱な悪魔 (MF文庫J) : 綾里 けいし, rurudo, rurudo: 本