読書感想:コスプレ義妹と着せかえ地味子

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 さて、コスプレという言葉があるのは画面の前の読者の皆様もご存じであろう。今や既に一つの文化、突き詰めればどこまでものめり込める、そんな多様性と深淵性があるのがコスプレと言う趣味である。例えばとあるアニメへの愛の示し方がコスプレ、という場合もある。それはその人なりの愛し方であるであろう。

 

 

無論、画面の前の読者の皆様の中にはコスプレと言うものの良さが分からない読者様もおられるかもしれない。例えば、アニメキャラのコスプレというものをしても、結局のところそれは同一化、そのキャラ自身にはなれないと正論を言われる読者様もおられるかもしれない。それもまた、一つのものの見方である。それを否定する事は誰にもできぬ。

 

 しかし、コスプレとはアニメキャラだけに限らず、メイド服みたいな普段とは違う服を着てもコスプレである。―――しかし、それは「着せかえ」という行為と何が違うのだろうか。コスプレと着せかえの境界線は何処にあるのであろうか。

 

それは分からぬけれど、この作品においては大切なのが「コスプレ」であり、「夢」というのが一つの重要なファクターなのである。

 

何処にでもいる普通の少年、御景。彼には今、始めたばかりの趣味があった。それは写真撮影。写真部の部長に才能が無いと言われながらも、それでも諦めきれない。それは何故か。

 

 それは、物語の始まる少し前。父親の再婚により義妹となった少女、眠夢(表紙)を肯定する為。何を隠そう、彼女の秘密の趣味はコスプレ。しかも衣装を自作する程のガチ勢だったのである。

 

今まで誰にも認められなかった彼女の秘密。それを家族として肯定したい、支えたいと拙くも真っ直ぐ、こつこつとカメラに向き合う御景。

 

そんな彼が眠夢との同居を始める日、もう一つの運命の出会いが訪れる。その出会いの主の名は光理。クラスで気付かれぬ程の地味子であり、実は美少女だった少女である。

 

思わず無意識に、光理の許可も取らず写真を撮ってしまい。だがそんな彼へと彼女は言う。自分はモデルになりたい、だからこそ撮ってみてほしいと。

 

そのお願いを却下するわけにもいかず、被写体として彼女にもカメラを向け。一瞬の素顔を切り取っていく。

 

「写真なら・・・・・・私を撮ればいいじゃないですか?」

 

だが、それを面白く思わない影が一つ。何を隠そう眠夢である。何処か不満げに、まるで警戒するように。おっかなびっくり光理に近づき、自分の中の独占欲を見せつけ、主張をしていく。

 

 この作品はコスプレとカメラ、一瞬の煌めきに彩られた作品である。だが、単純なラブコメとは言い難いかもしれない。ラブコメ未満、一体何と言えばよいのだろうか。きっとこう言うのが相応しいのではないだろうか。この作品は青春グラフィティである、と。

 

どこか淡く、だが色鮮やかに。心揺らす一瞬きりの青春を積み重ね、少しずつ近づいていく。それはただ甘いだけではなく、何処か儚い。

 

だが故にこそ、この作品は面白いのだ。

 

青春グラフィティが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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