読書感想:幼馴染で婚約者なふたりが恋人をめざす話2

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前巻感想はこちら↓

読書感想:幼馴染で婚約者なふたりが恋人をめざす話 1 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻を既に読まれた読者様であればもうご存じであろうが、改めて簡単に触れておくと、この作品の主人公である悠也とヒロインである美月は幼馴染で婚約者、だけど恋人と言う過程をすっ飛ばしてしまった(ある意味)恋愛弱者であり、言わば二周目である、恋人としては。では少しずつ積み重ねていく、恋人としての在り方、というものは今巻ではどうなるのであろうか?

 

 

(吐血)

 

・・・失礼いたしました。だが今巻は、前巻を読まれた読者様であっても気を付けてほしい。前巻を受けてこれほどかと自分の中で定めたハードル。その上を飛び越えていくどころかグライダーか何かで飛んでいくかのような巻であり、まるでブレーキの壊れた特急が如き勢いで突き進んでいくのが、今巻なのである。

 

「例の『ちゃんとイチャつけるように』ってやつを再開したいんだが、どういう方向で行こうかなと」

 

期末テストも終わり改めてクラスに意見を求め、而してその体勢は美月が悠也の後ろから抱き着いているというどう見てもイチャついているという体勢で。

 

「―――やっぱり一思いに一気にヤるより、ジワジワとシメた方がいいよね?」

 

大河に突如持ち上がった浮気疑惑、その追及の中、ふとお互いに浮気疑惑が持ち上がった時にどうするかという話となり。美月の意外なヤキモチ焼きが発覚したかと思えば、悠也のとんでもない秘めた闇が垣間見えたり。

 

 こんなやり取りを気安く繰り広げておきながら、まだこの二人は満足していない。もっともっとと、際限なくこの先を求めている。だけど、何が足りないのかが分からない。

 

「そもそも『2人の願望』って、何?」

 

そんな二人へ投げかけられる根底の疑問。どうなりたいのか。最終目標は見えれど、そこへ行くにはどうすれば良いのか? そこに至るまでの過程をすっ飛ばしてしまったからこそ、何と言えば良いのか、心にどんな形の名前を付ければ良いのかが分からない。

 

「・・・・・・僕が透花と付き合う前。何を一番考えていたと思う?」

 

そんな彼へと、将来の義兄となる美月の兄、伊槻は敢えて迂遠なヒントを投げる。恋人となる為どうするか。それは、先人が幾度となく通った道であり、彼等が通らなかった道へと続くヒント。

 

「当然すぎて願望っていう認識が無いのかな?」

 

美月もまた、義姉である透花と同席していた雪菜から投げかけられる。今まで当然のようにあったからこそ、気が付かなかった。すぐ側に本当は最初から見えていた、自分の願いを。

 

「私は、もっと悠也を好きになるよ。だから―――もっと私を好きになって?」

 

「―――俺も、もっと美月を好きになる。だから・・・・・・もっと好きになってほしい」

 

 そう、もっともっとと、先をこれ以上と求めるならば大切なのはその気持ち。思い合うために必要な、相手を振り向かせたい、釘付けにしたいという思い。意識せずにただそこにあった、形だけを模倣するだけでは気づけなかった、その気持ちこそが答えなのだ。

 

この作品は、カップルの数が多い。これでもかというほどに。故に甘い。そして、悠也と美月はお互いしか見えておらずその想いは不変。それだけでも甘いのに、更にどんどんとこれでもかと砂糖をくべていくからこそ、思わず砂糖を口から吐き出してしまう程に甘さが極限なく跳ね上がっていく。

 

そして、この愛は純愛である。まごう事無き純愛である。その上で初々しいラブコメをしているからこそ、最高なのである。

 

只管に甘い作品を読みたい読者様、全てのラブコメ好きな読者の皆様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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