読書感想:幼馴染で婚約者なふたりが恋人をめざす話 1

f:id:yuukimasiro:20210130194607j:plain

 

さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は家族愛と異性愛の違いについてどう思われるであろうか。家族愛があるから出来て、異性愛があるから出来る。そんな出来る事の違いについて貴方はどう考えておられるであろうか。

 

とある大規模なグループ企業の御曹司であり、自らも若き投資家として名を馳せる少年、悠也。(表紙下)。彼の幼馴染であり黙っていれば深窓の令嬢、しかしてその内面は親友気質のフランクな少女、美月(表紙上)。

 

 幼き頃から家族ぐるみの付き合いがあり、お互いを知り尽くした二人は親に決められた婚約者同士。しかし二人はそれを気にする事もなく、寧ろそれを受け入れそうありたいと願っていた。

 

「それはもちろん。今更美月以外とか、ちょっと考えられない」

 

「私も悠也以外は無理かなー。ね?」

 

既に結婚、その先も見据えお互い以外に相手はいないと考え。同じマンションの隣同士の部屋、半同棲の距離で付き合っていた二人。

 

 だがしかし、級友のほぼ全てから既に性行為を何度もしていると思われている二人はまだ付き合ってすらいなかった。・・・何を言っているのかと疑われるかもしれないが本当である。まだ付き合ってすらいなかったのだ、悠也と美月の二人は。

 

幼い頃からずっと隣にいて、まるでもう家族であるかのように付き合って。だが、まるで「熟年夫婦」と称されるように安定していたからこそ気付かれなかった。家族愛と恋愛の区別も付く間もなく付き合ってきたからこそ、一足飛びどころかもうゴールに辿り着いてしまっていたのだ。

 

 熟年夫婦、けれど恋愛初心者な二人は恋人同士となりたいと、恋人らしい事を意識せず出来る事を目指し、改めて恋人同士となる。そんな二人のお手本となり、導き手となるかのように二人の前には様々なカップルやカップルの卵達が、時に悩みを抱えながら現れる。

 

悠也と美月の幼馴染でもあり監視役、筋肉バカな大河とヤンデレ系電子ストーカー気質な雪菜。

 

風紀委員のお姉さん×ショタな出来立てカップル。

 

級友と彼の知り合いの小学生女子の、攻める者と攻められる者な形のカップルの卵。

 

 正に恋人が一杯。そして彼等から大切な事を学び、悠也と美月は少しずつ、時に過去を振り返りながら成長していく。

 

時に風紀委員のカップルを見て、お互いの性癖について見直しながら受け入れる事を学び。

 

時にカップルの卵を見て、自分達の昔を思い返しながら変わらぬ想いに思いを馳せて。

 

「・・・・・・美月、俺の体温が好きって言ってたから。だけど、さすがにいつも密着ってわけにはいかないから―――手で我慢してくれ」

 

 そして、まずは当たり前の事、だけど初めての事である手を繋ぐ事から始め、飛び越えてきた空白を埋めていく。

 

 正に恋人二周目、強くてリスタート。揺らがない、既に完成された関係。けれど初めて同士のちぐはぐな関係。

 

だからこそこの甘さは格別であり、真っ直ぐに心に突き刺さってくるのである。

 

甘さで死んでみたい読者の皆様、王道ド安定なラブコメが読みたい読者の皆様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

幼馴染で婚約者なふたりが恋人をめざす話 1 (HJ文庫) | 緋月 薙, ひげ猫 |本 | 通販 | Amazon