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読書感想:転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻を読まれた読者様であればもうご存じであろうが、この作品の主人公である隼人とヒロインである春希は「幼馴染」である。まるで運命に導かれるかのように再会を果たし、間を置かずにすぐにあの日のような距離感を取り戻して、まるでお互いに寄り掛かれるかのように、全てを許し合える関係ともいえる二人である。
だが、この二人は未だ付き合っていない。お互いの心の中にある思いに気付いてすらいない。そういう意味においては、まだ何も始まっていない状態であり。
更には、当然の事ではあるが世界は彼等二人だけに非ず。高校生という枠組みに属しているからこそ、クラスという世界に溶け込む事を求められ、その世界に順応する事を求められるのである。
隼人という気の置けない幼馴染の登場により、春希が今まで被っていた化けの皮が少しずつ剥がれだす中。みなもと接する隼人を見た春希の心の中、未確認の心が揺れる。彼が自分以外の女の子に照れるのは気に食わない、その想いは一体何なのか。
本命は春希だという噂のあるイケメン、一輝。彼が春希に接触するのを見た時、隼人の中に浮かんだ何処か黒い気持ち。その位置は、自分の位置だ。そう主張するかのように芽生えたその想い、根底にあるのは一体何か。
らしくないお互いの姿。それは図書館での密着ハプニングを経て、何処か言い知れぬ感情を抱かせていく。それは一体、何なのか。
画面の前の読者の皆様、もうお分かりであろうがどうかツッコミは控えていただきたい。彼等は未だ知らぬのだ、その想いの正体を。お互いがお互いの傍にいるのが当然であった「相棒」のような関係。だからこそ、最初から距離が近すぎたからこそ。唯一無二の友情を求めるからこそ。その想いには気付けない。
けれど、心は叫びたがっている。一度意識したのなら、変化は待ってはくれない。「親友」では足りない、そう言うかのように、もっと、もっとと。「特別」を相手に求めてしまう。
「だって、寂しいのは隼人も同じなんだもの」
自分を大切にしてくれる、受け止めてくれる。けれど隼人だって、抱えているものがある。だから今、「特別」になってはいけない。それはただ依存するだけ、一方的に寄りかかるだけ。
「きっとボクたちさ、昔のままじゃいられないと思うんだ」
「ボクはね、隼人の本当の特別になれるよう、もっと強く変わりたい」
だからこそ今、その胸の中の願いを。本当の特別、止められない変化の先、今度は本当に並んで歩いていくための決意を。
変わらないままではいられない、だからこそ一歩踏み出していく。前巻が再構築の巻であるなら、今巻は本当の始まりを告げる巻だ。
starting now。ここから全ては本当の意味で始まる。そしてここから春希が化けていくかのように、作品も化け始めるのだ。真の面白さが出ていくのだ。
やっぱり幼馴染ラブコメが好きな読者様、前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
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