前巻感想はこちら↓
読書感想：初恋だった同級生が家族になってから、幼馴染がやけに甘えてくる - 読樹庵 (hatenablog.com)
初恋の相手である「向日葵の女神」、日向。長年の幼馴染である「月の天使」、月乃。悠人のすぐ側にいて、三角関係を形成している全く以て正反対のこの二人。三角関係である以上、悠人は何れ選ばなければならない。そう言えよう。電撃文庫の某三角関係ラブコメ、のように仕方ないとはいえいつまでも迷ってばかりではいられない。いつか選ばなければいけないのだ。
だが、ヒロインレースをしないと明言されているこの作品で、どう決着をつけるのか？ 帯から既に明言されているそんな状況で、一体この関係にどう決着をつけるのか？
それはこれから語っていこう。しかし先にヒントを語るのであれば、「スキ」の形は一つではない。そして側に居れる関係も、一つではないのである。
前巻の顛末の中で現状維持を選び。月乃と猫カフェでデートをしたり、日向と二人でホラー映画を見たり。それぞれと時間を積み重ねる中、迫ってくるのは「聖夜祭」。彼等の通う高校で文化祭の代わりに行われるイベントであり、校舎の屋上からの告白が一大イベントとして設えられている大イベント。勿論生徒会のメンバーである彼等は準備に奔走せざるを得ず。各所との折衝をこなし奔走する中。徐々に日向の様子がおかしくなっていく。接し方がおかしくなっていく。
「きっと、何かを変えなくちゃいけないんだよ」
その原因に真っ先に気付いたのは月乃である。それもまた当然の事であったのかもしれない。何故なら、同じ思いを知る者だから。彼女だからこそ気付けた。家族と言う関係に思いを封じ込めようとしていた日向の思いが。だからこそ、月乃は決意し自分から関係を動かしていく。現状を打破し、変わる為に進んでいく。
賽は投げられた、もう止められない。否応なく時は進み、聖夜祭当日。ちょっとしたハプニングも乗り越えて、日向と月乃は悠人への思いを叫ぶ。
「どちらかなんて選べないくらい、二人に夢中なんだよ」
思いを受け、悠人の心の中で自然と浮かんでいく、彼だからこその答え。二人ともが好きだ、選ぶ事なんて出来はしない。
「恋人としてじゃなくて、これからもずっと、家族として傍にいてください」
でも日向とは、「恋人」になれずとも「家族」になれる。家族であっても「スキ」という思いは重ねられる。それもまた唯一無二の関係になれる。
「俺も月乃のことが好きだ―――俺と、付き合ってくださいっ」
そして、唯一無二の関係になりたいのは月乃だから。今まで見落としてきたものを一つずつ拾い集めて。だからこそ気付けた己の本当の思いのままに。悠人は月乃へと手を伸ばす。
誰もが大切、傷つけたくない。だからこそ選ばれたこの選択は、きっと唯一無二。その選択肢は皆をきっと幸せに連れていってくれるはずである。
胸の奥がじんわりと温かくなる、優しさに溢れた甘さのある今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
