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読書感想:異世界、襲来 02 王の帰還 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、仮面のヒーローとなったユウは全ての人間を守る事を前巻、自身に課した訳である。だがしかし、この世界の人々すべてに守る価値なんて本当にあるのだろうか。人々は本当に全てが善人、そんな訳が無い。だからこそ、その全てを守るべきであるのだろうか。
スカールシャンスも討伐し、世界は勢いを取り戻し始め。だが、その勢いを元から削ごうとするかのように異世界の陣営も侵攻を更に激化させ。否応なく世界は対応に追われる事になり、世界各国においてアスラフレームの配備が始まっていく。
その状況において、ユウ達は注目を集めない訳が無い。着装者三号であるユウの圧倒的な武力は勿論の事、アリヤが持つかもしれないアスラの覚醒を促す力も希望であり、アスラフレームの力を存分に引き出せるアインもまた、重要な存在である。
ここまで書いてしまえばもうお分かりであろう。ユウの陣営の面々は誰もが一級の戦力であり、欲しくなる人材。故に、そこに争いが起きぬわけがない。
中国の着装者四号、雪麗がユウ達に自らの軍門に降るように要求したり、インドネシアの着装者の候補者、シャンティ―と友誼を深めたり。
良いも悪いも、人間には色々な存在の形がある。なれば、今巻の敵となる同じ着装者、七号フレーム「アグニ」を従えるレオ(表紙左下)は悪い人間であるのか。
なつきと旧知でありながらも、彼女には見せなかった裏の素顔。それは誰よりも力に貪欲な、全てを欲しがり喰らいつくすかのような猛獣。
ユウよりも強い力を求め、その為のパーツとしてアインを求め彼女を拉致し。無論それを許すユウではなく、彼を追いかけた先、着装者同士の戦いは幕を開ける。
だが、その戦いはとある敵の介入により色を変え、混沌の事態を巻き起こす。その敵とは誰か。ユウ達と浅からぬ因縁のある大魔術師、クアルダルドである。
星を落とす魔術で戦場に混乱を巻き起こし、レオに仕込んだ呪詛で彼を狂わせ、戦況を崩し。
その奸計が弾けた戦いの果て、ユウは大切な友人を失う結果となってしまう。
「そんなことは―――しない!」
その痛みは何よりも重く、まるで鋭い刃のように己の心を傷つけ。だが、彼は『みんな』を守る者。だから誰にも怒りをぶつける事は出来はしない、抱え込むしかない。
暴走により失われた命は取り返せず、だけどクアルダルドは待ってくれない。着装者達の心が傷つき調和が失われたとしても、決戦の時は待ってくれず静かに迫り来る。
戦いの色に重さが加わり、待たされた分容赦ない展開が目白押しな今巻。
前巻を楽しまれた読者様、どうか覚悟してほしい。今巻は中々に地獄である。
異世界、襲来 03 星を呼ぶもの (MF文庫J) | 丈月城, しらび |本 | 通販 | Amazon