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読書感想:影使いの最強暗殺者 ~勇者パーティを追放されたあと、人里離れた森で魔物狩りしてたら、なぜか村人達の守り神になっていた~ - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、勇者とは何なのであろうか。一体、勇者とはどのような存在の事を言うのであろうか。画面の前の読者の皆様はどう思われるだろうか。その答えは各自あると思われるので何もいう事は無いが、この作品における勇者の定義、それに我等が主人公であるヒカゲが悩む事になるのが今巻である。
「・・・・・・わかっているさ。またすぐ次の厄災がくることくらい」
エステルの為に魔王を打ち倒し、久方ぶりに訪れた平穏な時間。少しどころか大分積極的になったミファに振り回されながらも楽しむ時間。けれどヒカゲは予感していた。またすぐに次の厄災がやってくるであろうことを。
その予感はすぐに現実的なものとなる。魔神の一柱であった魔王を討ち殺し神殺しを為したヒカゲを他の魔神達が放っておくわけもなく。それどころか、ヒカゲが過去に放り捨てた筈の家族関係、忌むべき家族である同郷の暗殺者達もまたやってくる。だがしかし、彼に訪れる出会いはそれだけではない。ある意味で懐かしき顔も、彼の前に姿を現すのである。
同郷の暗殺者達に先駆けて父の危篤の知らせを携えてやってきたヒカゲの妹、ひなた。彼女は来る途中でとある人物を拾ってきていた。その名はピズリー。もうお分かりであろう。魔に堕ち、魔族となり果てたかつての勇者でありヒカゲの因縁の相手である。
エステルの制止でひとまず怒りの矛を収め。サクヤの手により、魔族の細胞を抜くための治療を受ける事になるピズリー。
村に逗留する中、彼は目撃する事になる。ヒカゲの今現在での強さを。襲撃をかけてきた外敵を打ち倒し、それどころか魔神の一柱、竜魔神ベルナージュから「闘気」に関する手ほどきを受け、更に成長していく彼の姿を。
「辛いに決まってるだろ」
「おめーも、大変なんだな」
「笑え」
そして、心のしこりを解いて初めて正面から向き合って、ヒカゲは知っていく。ピズリーなりの勇者としての在り方を。同じように、守るべき重荷を背負った者同士として、先達として、どう脅威に立ち向かうべきか、という事を。
その不器用な助言と、ちょっとだけ手荒い激励は、重荷に潰されそうになっていたヒカゲの心を救い。彼を一歩進ませ、本物の「勇者」へと導いていく。
例え怖くても、殺したくなくても、譲れない。自分は防人だから、勇者だから。
「「勇者で、魔王退治だよ」」
そして復活した魔王の目の前。先達たる光の勇者、ピズリーの隣に闇の勇者、ヒカゲは並び立つ。黒獣と和解し身に着けた新たな力をその手に、もう一度見出した大切なものをその胸に。
真の意味で戦友として並び立ち、同じ道を歩かずとも並んだ二人の勇者に勝てる敵などいるものか。誰よりも気に食わない、そんな二人だからこそ分かり合えるその絆の形を前に。
ただ最強なだけではなく、心を身に着け本当の力を身に着け成長し。気に食わぬ存在だった勇者も本当の意味で改心する今巻。だからこそ、この巻は面白い。
前巻を楽しまれた読者様、王道の熱さが好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。