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読書感想:魔王2099 1.電子荒廃都市・新宿 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、どうやら今、現実の日本における東京の街、秋葉原はオタクの街という呼び名は何処へやら。今は少しずつ寂れ、形骸化しつつあるらしいという話を聞き、私は至極残念である。私にとっては秋葉原こそ憧れ、何度行っても飽きない夢のある混沌とした街という思いがあるので。
そんな私の個人的感情はどうでも良いので、この作品における秋葉原は一体どんなものであるのか。
世界同士が融合し、化学と魔術が交差し交じり合うこの世界においての秋葉原。それは古きと新しきが交じり合い激突する、混沌と無法の溢れる街である。
「学校に入りたいのなら生徒になればいいではないか」
そんな、魔王様が好みそうな街にベルトールは何のために、わざわざ学生として潜入しようと言うのか。その答えは簡単。行方知れずの残り三人の魔侯を探す為。その手掛かりとなる古の魔導具、「魔侯録」が秋葉原にある最古の魔法学園の地下、五百年開かずの宝物庫にあるらしいと判明したが故に。
ためらうことなく、呵呵大笑しながら高橋の手を借り、留学生として身分を偽り、魔法学園へと潜入する彼は目にする事となる。秋葉原に滞留する混沌、そしてこの世界の学生達の魔法のレベルの低さを。
先達として実力を見せつけたり、マキナと共に街を周ったり。新しい場所での新たな日々も、これでもかと楽しむベルトール。
だが、彼の前に待っているのは賑やかな日々のみに非ず。戦いもまた、彼を待ついつもの日常である。
女神により下賜された「王微」、それを有する御三家。その一つを継いだ少女、緋月(表紙左上中央)。他の二家の当主、トラート(表紙左上左)、コルネア(表紙左上右)の庇護下の元、何処か厭世的に生きている彼女。
「王微」を持つ者に渡りをつける為、彼女と友誼を結び絆を深める中、彼の元に現れるは「新世教会」と名乗る、「勇者」を擁すると嘯く謎の敵達。
彼等の悪意と真の目的、女神の再臨の為の策は秋葉原にて弾け、均衡は弾け、混沌は今にも爆発せんとする火薬庫へと変わる。
そんな危機を、黙って見過ごす我等が魔王、ベルトールであるか。否、そんな訳はない。何故なら彼こそが魔王。この世の全てを支配すると決めた以上、敵は叩き潰すのみ。
「―――助けて、ベルトール」
「―――ああ、無論だ」
そして、緋月と交わした約束がある。必ず助けると誓った、なればやるべきことは只一つ、シンプルイズベスト。救い出す、それだけだから。
世界の裏で蠢いていた闇は舞台へ上がり。残る魔侯の行方の手掛かりも垣間見え。更に世界は広がり、大きく深まっていく中、正に快男子なベルトールの活躍が、更なる熱さを呼び込んでくれる今巻。
前巻を楽しまれた読者様、王道ゆえの面白さを楽しみたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。