読書感想:魔王2099 1.電子荒廃都市・新宿

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方はファンタジーはお好きであろうか。若しくはサイバーパンクな近未来的な世界はお好きという読者様はどれほどおられるだろうか。ではもし、未来の世界で魔法が使えるようになっていたら、貴方はどんな魔法を使われたいであろうか。

 

かつてとある異世界、魔法が存在する異世界で聖剣を携える勇者、グラム(表紙左から三人目、青マントの人物)に討たれた不死なる魔王、ベルトール(表紙右端)

 

だがしかし、五百年の時を経て儀式の完遂により復活した彼の目に映る世界は、とんでもなく様変わりしていた。かつての世にはなかったものが溢れ、夜の闇の中にも無数の光が乱舞する世界へとなっていたのだ。

 

それもその筈である。何故なら世界は、現想融合という融合現象を経て、機械が発達した欲し、我等が地球と融合してしまっていたから。そしてベルトールが復活した場所は、魔導工学という新たな工学が発展し、「ファミリア」と呼ばれる魔導具とエーテルリアクターを元に発展を遂げた都市国家、「新宿市」だったのだ。

 

時を経ても変わらぬ忠誠を送る忠臣、マキナ(ベルトールの左上)に支えられ案内され、まずは超巨大企業の社長となっていたかつての配下の一人、マルキュス(表紙左上)へと接触を図るベルトール。

 

 だが、自らが魔王になると言う欲望を抱えたマルキュスは既にベルトールを裏切っており、彼の手によりファミリアはベルトールには適合しないよう作られていた。そして信仰も失ってしまった彼は今、最弱の存在へと身を墜としていた。

 

早急に信仰と畏怖を集めねば戦力にも事欠き、更には食い扶持を得なければ生活すら出来ぬ。

 

「こんばんモータル~、どうもー定命の者共、生の苦しみ味わってる? 魔王ベルトール=ベルベット・ベールシュバルト、即ち余である」

 

マキナの友人であるハッカー、高橋(マキナの左下)に提案を受け彼はライブストリーマーという今時な仕事を始め、収入を得ていく。

 

そして、彼はそんな新しい生活の中で知っていく。今までとは全く違う生き方、そしてこの新宿という都市に隠された凄惨な真実。不死なる者達を生贄にし、この都市は稼働しているという真実を。

 

「・・・・・・勇者と魔王が手を取り合うとは、今まで考えた事もなかった」

 

「僕もさ」

 

一連の事態の裏にいた黒幕、マルキュスに拉致されたマキナを救うべく、不老の加護により生きていたグラムと一時共闘し。

 

「戯けが。五百の星霜で耄碌したか。我こそは闇の梟雄、魔王ベルトール。悪逆非道こそ我が王道よ」

 

そして、新しき生活の中で知ったあの日の負けた理由、「命の輝き」の意味を胸に。不忠な輩へと、裁きの鉄槌を繰り出して見せる。

 

 科学と魔法が交差し融合し、目の前に広がる未知の世界。そこで繰り広げられるのは、魔王の成長とあの日と変わらぬ悪の覇道。

 

正に古きと新しきが絶妙な感覚で噛み合っており、そこに王道という芯を通しているからこそ、この作品は面白い。正に大賞に相応しいのである。

 

サイバーパンクな世界が好きな読者様、ファンタジーの王道が好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

魔王2099 1.電子荒廃都市・新宿 (ファンタジア文庫) | 紫 大悟, クレタ |本 | 通販 | Amazon